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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
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第129話 悪魔のしかけたミスディレクション

 さすがに想定しきれていなかった——。


 マリアから報告を受けたスピロは、歯を(きし)ませる思いだった。

 7月の終わりのパーティーから戻って一夜明けると、一カ月も過ぎているとは頭の隅に浮かびもしなかった。この悪魔を甘くみていたつもりがなかったが、こうもまんまと出し抜かれるとは予想外だった。

 一足飛びに時間が跳ぶ『超跳躍(ジョウント)』の経験がすくなかっただけに、そこをつかれたことに悔しさがつのる。


「たいへん申し訳ありません。完全に出し抜かれました」


 スピロは部屋に集まった面々を前に、悔しさをにじませた。

「マーサ・タブラム嬢の事件が本来の歴史の犯行の日時よりも、10日ほど早まったという変化に完全にまどわされました。次の犯行もおなじくらいのスパン、前倒しされてくると予想して、早めに手をうったつもりでした」


 それこそが、悪魔のしかけた『ミスディレクション』——。


「スピロ、きみの責任じゃないさ」

 そうスピロをかばってきたのは、セイだった。

「ぼくらも全然気づかなかったンだからさ。いや、どこかで最低でも一週間以上余裕があるとさえ思っていた。だからスピロのとった作戦は、まちがいないものだったんだ。それだけ自信をもった作戦だっただけに『先送り』……『超跳躍(ジョウント)』が起きているなんて気づかなかった……」


「あぁ、そうだな。オレも犯行を早めたのは、悪魔のヤツが焦っていると、すっかりたかをくくってた」 

 めずらしくマリアも反省を口にしたが、ゾーイは苛だつようにスピロに意見した。

「お姉さま。起きちまったことをあれこれ言っても仕方ないんじゃないかい。それよりすこしでもはやく今晩の対策を考えようじゃないか」

「そうです。犯行時間は真夜中の3時頃でしょう。まだリカバリできる時間は残されていますわ」

 エヴァもゾーイに刺激されるように、前向きの意見を口にする。


「ええ、ゾーイやエヴァ様のおっしゃるとおりです。まだ半日あります」

「スピロ、なにか案はあるのかい?」

「はい、セイ様。今のところ所在があきらかになっているのは、ウィリアム・シッカート様だけです。シッカート様を見張る必要はありますが、今回はホワイト・チャペルの犯行現場付近に全員で分散して、凶行の瞬間を押さえるしかないでしょう」


「ピーターがだれかを見つけてくるかもしれない」

「見つかるとありがたいですが、とりあえずはここにいる全員で現場を見張るのが、一番近道でしょう」

「ちょ、ちょっと待ってくださいよぉ」

 コナン・ドイルが調子っぱずれな声をあげた。



「ここにいる全員……って、あたしも含まれてます?」

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