第121話 DNA鑑定で切り裂きジャックと認定された人々
「はい、エヴァ様のおっしゃるとおり。最後のひとりはその最たるものでしょう。この人物は複数の犯罪歴と、精神を患っていたということで容疑者とされました……」
「ポーランド人のアーロン・コスミンスキーという理髪師です」
「まぁ、なんでそんなことで、切り裂きジャックの容疑者に?。シリアル・キラーというのは無理があるのではないですか?」
「わたくしもそう思うのですが、最新のDNA鑑定で犯人と指摘された人物ですので、リストからはずせないのです」
「DNA鑑定で犯人だった、とぉ。だったらきまりじゃねぇか!」
「はい、マリア様。ふつうならそうです。ですが、採取されたものが、4人目の犠牲者キャサリン・エドウズさんの、そばに落ちていたショールに付着した体液だ、と言ったら、どうです?」
「おい、おい、突然、きな臭くなったぞ」
「はい、100年以上前の本人のものともしれない証拠物件。しかも鑑定で使われたのは、『ミトコンドリアDNA』と言われる不確実なものでした」
「それだとどうなる?」
「犯人が金髪で青い目、というざっくりしたものくらいまでしかわかりません」
「はぁ?」
「そうなりますわよね。実はウォルター・シッカートさんも、切裂きジャックの手紙のひとつから採取された体液の『ミトコンドリアDNA』が一致したというだけで……」
「ーーったく、誰だ?。こんなゴミみたいな根拠で犯人だと言ってるのは?」
「『検死官』シリーズで有名なパトリシア・コーンウェルという高名な作家が、8億円も自費をつぎ込んで、そう言っています」
「はーー、素人目にも無理がすぎるな」
マリアがあきれかえって言った。
エヴァがスピロに提言する。
「でもスピロさん。でもその容疑者四人を探しだして、事件当日に張り込めば、そのなかの誰かが犯人になるってことでしょう」
「ええ、エヴァ様、四人以外にいる可能性もふくめて判明するでしょうね」
「でも、お姉さま、あたいらで四人を見張るってぇのは、けっこうハードだね」
「ええ、ゾーイ、わかっております。ですから……」
スピロは上の階を示すようにして、天井を見あげてから言った。
「未来の大作家さんたちにも、手伝ってもらうことといたしましょう」




