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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
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第114話 切裂きジャック事件 概要3

※ 残酷描写が記載されています。

※ 苦手なかたは注意のうえ、お読みください。



 仰むけに倒れていたアニーは、相当に抵抗したらしく手も顔も血まみれだった。


 首はねじれてあらぬ方向をむいており、首筋には白いハンカチが堅く結ばれていた。彼女の喉は左から右に切り裂かれていた。そのあと首を切り落とそうとしたらしいが、気が変わったのか、首を胴体につなぎとめるようにハンカチがあてがわれたようだった。

 黒の長いコートとスカートはたくしあげられ、アニーは両脚をおおきく広げられていた。が、その露出した腹部は切り裂かれて、内蔵が飛びだしている上、腹部から抜きとられた腸を、両肩の上にかけられていた。

 さらに子宮、膣の上部、膀胱が抜きとられ、持ちさられていた。

 

 この事件はその日の夕刊各紙でセンセーショナルに取りあげられた。

 そのあまりの大反響ぶりに、新聞記者たちは界隈を取材しては、あることないことを書きたてた。それに呼応するように、ホラ話や噂話が流布し、不審者とみれば片っ端から通報されたりした。警察も威信をかけて、怪しい者を手当たり次第連行しては、人権などおかまいなしの手荒い尋問をおこなった。


 地下鉄駅に近い各現場はすっかり観光名所と化して、休日や日曜日の昼間は人の波でごった返すほどになった。

 ホワイトチャペル・ロードにあったちいさな蝋人形館では、女性のマネキンに赤いペンキを塗りたくって、犯罪現場を再現し大当たりをとった。が、これを知ったアバーラインは、公序良俗に反する行為としてただちに蝋人形館の閉鎖を命じた。


 犯人を捕まえられずにいる警察にいらだった、ホワイトチャペルの商人たちは、自警団を結成し、情報提供者に懸賞金を払うとの公示をおこなった。これによって金目当てのガセネタ、悪戯、根拠のない密告などが横行して、現場は混乱した。

 市民の不安や恐怖がおさまらず、社会全体がヒステリックになってくると、当然のように『スケープ・ゴート』が浮上する。


 レザー・エプロン——。


 第一のメアリの犯行現場が廃馬処理場に近接していたこと。

 凶器が職人が使う先の尖った幅広のナイフだと言われたこと。

 そしてアニー殺しの現場近くに古いレザー・エプロンが落ちていたこと、だった。


 このことを嗅ぎつけた新聞記者が、これぞ犯人の遺留品と書きたて『レザー・エプロン』はこのホワイトチャペルミステリの殺人鬼の代名詞として、ひとり歩きすることになる。このレザー・エプロンはその後すぐに、ただ廃棄されたものであったことがわかったが、その時には『レザー・エプロン=殺人鬼』として定着し、イーストエンド中にレザー・エプロン恐怖症が蔓延(まんえん)した。



挿絵(By みてみん)

レザーエプロンを報じる当時の新聞



 新聞もこぞって『レザー・エプロン』の名を使い、人々の口の端にその名がのぼらないことはなかった。

 あまりの加熱ぶりに、アバーラインは「そんな忌々(いまいま)しいあだ名をなんども聞かせるな!」と記者をどなりつけたという。


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