第113話 切裂きジャック事件 概要2
遺体の写真等がありますので、閲覧注意です
被害者はメアリー・アン・ニコルズ(43歳)、通称ポリー。
娼婦だった。
午前2時半に、ホワイトチャペル・ロードで「客待ち」をしている様子が目撃されていたが、わずか一時間後にホワイトチャペル・ロードから一本奥に入ったバックス・ロウで無残な姿で発見された。
早朝出勤のふたりの馭者が発見し、警察を呼びに行ったのと入れ替わりに、偶然巡回中の別の巡査が彼女を発見した。巡査は『雌牛の目』とよばれる角灯でメアリーを照らし詳しく調べた。
彼女からは強いジンの臭いがし、切り裂かれ喉からは、まだ血が噴き出していた。
彼はあわててホイッスルを吹いた。
そこへ別の巡査を連れてきたふたりの馭者が戻ってくると、彼は救急荷車(台車付き担架)を要請した。
彼女は喉を横に2度切り裂かれ、さらに下腹部から喉に向けて縦に深く切りあげられていた。だがその血はぶ厚い衣服に吸い取られて、ワイングラス2杯分程度しか道路に流れでていなかった。
検死をおこなった医師の見解は、犯人がかなり解剖学的知識のある左利きの者ということだった。
すぐにスコットランド・ヤード犯罪捜査部(CID)から、フレッド・アバーライン警部を主任とした捜査陣が送り込まれることになる。
新聞社は犯行現場がホワイトチャペルということもあり、マーサの事件と関連づけ、『またまたホワイトチャペルに謎の殺人』の見出しでおおきく報道した。そうやってロンドン中の人々の口に膾炙されるようになると、CIDはアバーラインを中心に聞き込み捜査を強化し、この街娼連続殺人事件に注力することになった。
次の事件は8日後、ポリーの葬儀の次の日に起きた。
被害者の娼婦はアニー・チャップマン、通称ダーク・アニー(47歳)。
その日の宿賃を工面するため、その日の午前2時に街に出て客を物色しに出かけるのを目撃されたのが最後だった。彼女はハンベリー・ストリート29番地のレンガ造りの三階建ての古い貸間長屋で見つかった。
ここの住人が出勤しようと裏庭に出たところ、隣家との仕切り塀の下で倒れているアニーを見つけた。差し込んできた朝の光に照らしだされたアニーは、すぐに死んでいることがわかった。
ホワイトチャペル警察署に事件が伝えられると、居合わせたヤードの警部がすぐに医師に連絡し、あたりを封鎖、捜査主任のアバーラインに電報を打った。




