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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
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第111話 その不気味な男の正体——

 その男の印象は、不気味、のひと言だった。


挿絵(By みてみん)

1984年頃


 存在感があるという前向きのとらえようもあったが、どういうわけか、どうしてもネガティブな表現しか思い浮かばない。

 ひとの心をのぞき見るような鋭い目と、痩せているわけでもないのにそげ落ちた頬は、カマキリやキツネのような無慈悲な捕食者を思い起こさせ、そこはかとなくひとを不安にさせる。顔立ちや物腰そのものは紳士然としているだけに、不気味、という印象が逆にきわだって感じられる。


「ああ、キミもいたか」

「いたかはないだろう。仕事の話があるから来てくれと呼ばれたから、わざわざ出向いたんだ」

「申し訳ないが、仕事の話はまた後日あらためてでお願いできないだろうか?」

「仕事はないってことか?」

「いや、そうじゃない。じつは我が『ザ・ウーマンズ・ワールド』に、挿し絵を描いてもらいたいと思ってたのだよ」

「挿し絵かよ。オレは画家なんだがね」

「まだ喰うのに困っているのだろう」

「ああ、だが安売りはしたくねぇ。わるいが帰らせてもらうよ」


 そう言うなりスタスタと出口へ向かっていった。これみよがしに乱暴に扉を閉めるのではないかと思ったが、その男は音もなく扉を閉めていった。


「いやはや、あの御仁はだれかね?」


 男がでていくなり、スティーブンソンがワイルドに尋ねた。

「なあに、まだ駆けだしの画家だよ。あのエドガー・ドガの親友と聞いたので、興味があったのさ。画力はたいしたもんだが、なにせ絵が暗かったのでどうかと思ったが……。あぁプライドが高いのでは……」

「だが、あの高名なドガ氏が認めたのだろう。誰なのかね?」

 マシュー・バリーが興味をそそられて訊くと、ブラム・ストーカーが軽く挙手して説明をかってでた。


「それなら、わたしが知っている。7、8年前までわたしとおなじヘンリー・アーヴィンの劇団にいて、演劇の勉強をしていたからね。まさか画家になっていたとは……。まぁ、名前を言ったところで知らんでしょう。無名の画家です。たしか、ウォルター・シッカート(28歳)だったかと」


 その瞬間、はねあがるようにして、スピロが立ちあがった。うしろに椅子が倒れて、おおきな音をたてて床にころがる。

 スピロは愕然(がくぜん)とした表情で、男がでていった扉を見つめていた。

 こころなしかからだが震えているようにも感じられる。いつも冷静沈着なスピロのただならぬ様子に、だれも声をかけられずにいた。


 セイはゆっくりとたちあがると、スピロの背中に手をあてがいながら訊いた。

「スピロ、どうしたんだい?」


 スピロの喉の奥底から聞こえるか聞こえないか、ギリギリの声が絞りだされた。

「あの男が……」




切り裂きジャックジャック・ザ・リッパー……」

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