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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
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第107話 おまえのせいでとんだ大恥をかいたぞ!

「さぁ、僕の古くからの友人、エイブラハムを紹介しよう」


 そう紹介された男は、ワイルドよりひとまわりくらい歳がちがって見える、がっしりとした体躯をした髭面の中年だった。だが七三になでつけられた髪形と、きっちりと整えられた(ベアード)のせいで、不思議と清潔感にあふれて感じられた。


「彼とはすこしばかり年が離れているが家族ぐるみの知りあいでね。むかしはよく一緒にクリスマスを祝ったりしたものだよ。いまは舞台、そう、かのヘンリー・アーヴィングの舞台の裏方をつとめている」


 そういうとワイルドは屈みこんで、座っているエイブラハムの肩に手をまわした。

「それに彼の奥方、フローレンス・アン・レモン・バルコムはじつに美しい女優だしね」

挿絵(By みてみん)


 エイブラハムは実に迷惑そうな顔をしてワイルドをにらんだ。


「そう、この男こそ、僕の恋人だったフローレンスを(めと)った、実にけしからん男なのだよ」

「またその話かね、オスカー。きみがフローレンスに一方的に求婚を断られただけだろう」


「あいかわらずお堅いね、こういう話は少々エスプリをきかせないと、パンチライン(オチ)が生きないだろう。わかるかね。エイブラハム……」


「エイブラハム・ブラム・ストーカー(41歳)」

挿絵(By みてみん)

1900年頃のブラム・ストーカー



「ブラム・ストーカーぁぁぁぁぁぁ!」



 マリアが椅子からはね起きるなり、そのままテーブルを飛び越えて、その男に掴みかからんばかりの勢いで叫んだ。


「ブラム・ストーカーぁぁ、おまえのせいで、オレはヴラド三世を怒らせちまって、とんだ大恥をかくことになったぞ」

 マリアはブラム・ストーカーを指さして非難したが、誰もがマリアがどういう抗議をしているのか、いやそもそも何を言っているのかわからずにいた。

 スピ口ですらキョトンとしている。


「あいかわらず、直情径行がすぎますわよ。マリアさん」


 エヴァがマリアをたしなめた。

「マリアさんは今から数年前に、15世紀のワラキアの領主、ヴラド三世にいる過去にいって謁見したことがあるらしいんです。その時、ブラム・ストーカーさんの著作のことに触れたせいで、たいへん立腹されてしまい、恥をかいた、ということですわ」


 説明をきいてもブラム・ストーカーは、なにをとがめられているのかが、わからないようだった。

「ヴラド三世。著作?。失礼だがあなた方が口にされていること全部が、まったく意味がわかっていないのだが……。だいたいひとの名前を聞いただけで、そんなに反応されるのはどういうわけなのです」


「しかたがありません。ブラム・ストーカー様は著作も有名ですが、お名前も知られているものですからね」


「ボクのときと大違いじゃないか」

 スピロの説明にジェームス・マシュー・バリーが皮肉たっぷりにつぶやいた。

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