表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
581/932

第106話 なんで作者名をみな知らないんだ。未来人は!

「『ピーター・パン』だったらぼくもよく知ってる」


「子供の頃、ミュージカル劇を見にいったことあるよ。作者名までは覚えてなかったけど……」 

「あぁ、オレも『ピーター・パン』はちいさい時から、なんどもアニメーション映画を観ていた。まぁ、作者は知らなかったがな」

 そうマリアが証言を重ねていくと、マシュー・バリーの神経質そうな顔が、さらに気むずかしげに、ゆがみはじめた。

 が、すぐにぶちまけるようにテーブルを叩いてどなった。


「なんで作者名をみな知らないんだ。未来人は!」


 あまりの剣幕をみてコナン・ドイルが、マシュー・バリーをなだめるように言った。

「ジェームス、あたしもその気持ちわかりますよ。あたしなんかはシャーロック・ホームズやワトソン、それにあたしの名前までみな知ってるっていうのに、だれも読んだことがないって言われたんですよ。作家にこれほど失礼な話はないってもんで……」


「そうでしょうか?」

 スピロが静かな口調で言った。

「おふたかたの作品は百年後の未来でも、ずっと愛され続けているのですよ。わたくしは、作家としてこれほど幸せなことはないと思ってしまうのですが……」

 そのことばには、まぎれもない尊敬の念が感じとれた。


「ま、まぁ、たしかに。そう聞くと自分がすこしは誇らしく感じられるな」


 マシュー・バリーは自分のおこした癇癪(かしゃく)を恥じいってか、語尾をにごしながらうなずいた。

 だが、ワイルドはマシュー・バリーの肩をたたきながら、鼻高々にいばってみせた。


「まぁ、僕のように作品名も名前も後世に語りつがれるためには、文学とジャーナリズムの両方にわたって、才を持ってなければならんということだよ」


 マシュー・バリーもコナン・ドイルもワイルドの、我が物顔のふるまいに顔をしかめた。が、それ以上にスピロは気分を害したらしい。

 すぐに舌鋒をワイルドにむけた。


「そうですか?。ワイルド様。文学とジャーナリズムのちがいはなんなのでしょうか?。こたえは、ジャーナリズムは読むに耐えない。そして文学は読む人がいない。それだけのことです」


「スピロ、なんと残酷なことを言われるのだ」


「あら、これはワイルド様、あなたが未来に残されたことばですよ」


 あたりから失笑が漏れた。

 これぞ、スピロ・クロニス——。おもわずセイの口元もゆるんだ。


 オスカー・ワイルドは忌々しそうな顔をしたが、すぐに隣の椅子に座っている男の背後にまわって、なにごともなかったように紹介に戻った。


「さぁ、僕の古くからの友人、エイブラハムを紹介しよう」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ