表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
572/932

第97話 ロンドン警視庁刑事訪問でパーティー会場ざわつく

 ゾーイはアバーラインがこの場所にやってきた、と聞いて驚いていた。


 セイたちがワイルドと一緒に別室にと招かれたとき、ネルはひとりでもこのパーティーを楽しみたいと言ってきた。だが彼女ひとりにするのをよしとしなかったスピロは、ゾーイを監視役に命じた。ゾーイ自身も執事の格好をさせられているので、その役は引き受けざるを得なかった。

 スピロは最初からそのような目論見で、自分にそのような格好をさせていたのだろう。


 ネルはひとりっきりでも思う存分にパーティーを楽しんでいた。赤毛が目立つというのもあったが、スピロが見立てた衣装がとても品よく見えたおかげもあり、紳士たちから次々と声をかけられた。

 元々が社交的であったのだろう。上流階級の社交場の雰囲気をつかんで、あっと言う間にこの場になじんで、ワインやシャンパンの杯をいくつも重ねながら、ネルは紳士・淑女連中と話をはずませていた。

 ゾーイははたで見ているだけだったが、ネルはとても満足そうに表情を華やがせていた。


 ロンドン警視庁スコットランド・ヤードの刑事が来た、と聞いたのは、数年前に奥方を亡くしたという中年の下院議員と、ネルがビッグベンについて語りあっていた時だった。

「ゾーイ、どういうことなのかしら。ロンドン警視庁(ヤード)の方々がこのような郊外まで来られるなんて……」

 エチケットブックの予習のおかげもあって、すっかり淑女のような立ち居振る舞いをしている。

 ゾーイはそれにあわせて、かしこまった口調で答えた。

「ネル様。あまり気にかけることはないかと。主催者のワイルド様は顔が広いお方ですから、そちらに用があるのでしょう」

「いや、いや、わからんぞ。ロンドンのイーストエンドの刑事だと言っていたから、わざわざ罪人を追いかけてきたのかもしれん」

 下院議員がワインを口に運びながら言った。

「罪人をですの?。まぁ、怖い。なにをしたのでしょうかね」


「あの街には窃盗とか売春とかがはびこって……」


 下院議員が無粋なことを口にしたのを、すぐさまゾーイがとがめた。

「下院議員様、申し訳ございませんが、お嬢様の前でそのようなけがらわしい犯罪を口にするのはお控えいただけますか?」


「あ、いや、これは大変失礼を……」

 下院議員はうやうやしく頭をさげると、ゾーイにちらりと恨めしげな目をむけ、そそくさとネルの前から去っていった。


「ゾーイ、そんなにすごんではわたくしの周りから、紳士という紳士がいなくなってしまいますわよ」


 ネルは下院議員のうしろ姿を見送りながら、不満そうな顔で言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ