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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
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第79話 バスカヴィル家の犬はまだ書いてねえのか?

「ほうら、やっぱり売れてないじゃありませんか」


「いや……、でも、『マイカ・クラーク』は編集のほうでも評判が高くてですね——」

 ターナー夫人にむかって、コナン・ドイルは必死で弁明をはじめた。

 マリアがボソリと呟く。


「なーんだ。『バスカヴィル家の犬』はまだ書いてねえのか?」

「『四つの署名』もまだのようですね」

「ぼくは『まだらの紐』が好きだったな」

「『赤毛組合』も忘れちゃなんない傑作だろ」


 マリアのことばを口火にして、エヴァ、セイ、ゾーイが続いた。スピロもそれにつられるようにして、自分の思いを吐露した。

「わたくしはなんといっても、アイリーン・アドラーが登場する『ボヘミアの醜聞』が一番ですわ」

 コナン・ドイルはセイたちの口々から飛び出す小説のタイトルに、ターナー夫人への弁明もわすれて呆然と立ち尽くしていた。

「きみたちはなにを言ってるかな?。そりゃ、たしかに『四つの署名』ってぇのは、あたしがあたためている作品のタイトルのひとつですがねぇ、なんで、きみらがそれを知ってるんだ?」

 スピロは目を輝かせて、コナン・ドイルに言った。

「これは全部、将来あなたが執筆する作品のタイトルですのよ」

「あたしが執筆する……?。じゃあ、きみたちはあたしの作品を読んでるのかね?」


「ぜーんぜん」

 スピロ以外の全員が首を横にふって言った。


「なんなんだぁぁ、キミたちはぁぁ」

 コナン・ドイルは足をドンと踏みやって(いきどお)った。


「あのぉ……」 

 その時、セイたちの背後で手が挙がった。モリ・リンタロウだった。

「あのぉ、コナン・ドイルさん……」

 リンタロウはおずおずと前に歩みでてきて言った。

「小生、モリ・リンタロウと申します、日本人の医者でして……」

「医者!。ニッポンの!。まぁ、ニッポンっていうのがどこにあるのかよく知りませんが、あたしも医者なのでね、話しが合いそうだ。この子たちはさっきから、なにを言っているのか、ちっともわからなくてですね」

「そうですよね、小生は軍医なのですが、あなた同様、作家として名を残すと云われましてね」

「はぁ?。あなた、それ信じたんですか?」

「えぇ、もちろんですとも」

 リンタロウはターナー夫人に聞こえないようにコナン・ドイルの耳元に口を近づけて囁くように言った。

「どうやらこの子たち、この世のものではないらしいんです」


 そのとたん、ドイルのからだが電流でも流れたかのようにぶるっと震え、ドイルはその場に腰を抜かして倒れ込んだ。コナン・ドイルはガクガクとからだを震わせながら、セイのほうを指さしながら、必死で声をあげた。


「じゃ……、じゃあ……、この子たちは、幽霊なのかぁぁぁ」

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