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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
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第67話 小生の名前は森林太郎です

「ちょっと、そこの君……」


 ロンドン警視庁の玄関からでてきたところで、セイは背後から声をかけられた。

 ふりむくとそこに一人のアジア人の青年が立っていた。

 彼はハイネックのしゃれたジャケットを着込んでいて、頭にはすこし低めのシルクハットでめかし込んでいた。ただ前身頃のあわせ部分があまりに狭く、首まわりがとても窮屈そうなので、堅苦しい印象を受ける。

 口の上に申し訳ていどの髭をはやして、大人びた印象を与えようと躍起になっているようだったが、セイにはあまり似合っているようには感じられなかった。それでも、理知的で落ち着きのある人物だという印象をもてたし、なによりも細く切れあがった(まなじり)にひきつけられた。

 青年はふいにその表情を解いて、嬉しそうに頬をほころばせてセイを見た。



「いやぁ、たまげましたよ。龍動(ロンドン)市中で日本語の会話を耳にするなぞ、思いも寄らず。ついお声掛けしてしまったが、まさかそれが貴君のような少年だとは……」

「失礼ですが、あなたは……」

「いや、これは失敬した」

 彼は頭をさげて詫びをいれながら、セイのほうに手をさしだし握手を求めた。


「小生は森・林太郎《26歳》」


挿絵(By みてみん)

※ドイツ留学時代の森林太郎


 森・林太郎——。

 セイはその名前になぜか聞き覚えがあったが、どうにも思いだせずに頭をかしげた。だが、マリアはその名前を口のなかで、転がしたかと思うと大声で叫んだ。


「モリ・リンタロウだとぉぉぉぉぉ」


「マリア、知ってるのかい?」

 セイは他意もなく聞いたつもりだったが、マリアの頭上にはすでに黒い雲が浮かんでおり、マリアはそこに手をつっこんで武器を引き抜こうとしていた。

「マリア!」

 あわててセイが制止すると、マリアはリンタロウを指さした。


「あいつは、極度のロリコン野郎で、マフィアの首領(ドン)だ!」


 マリアのことばは真に迫っていたが、森林太郎は面喰らった様子でセイに尋ねた。

「ロリ……コン?、マフィア?。この子はなにを云ふておられるのかな」

「いや……、ぼくもなにを……」

「なにをとぼけてやがる。モリ・リンタロウ……」


「いや、森鴎外っ!」


 今度はその指摘にモリ・リンタロウが目をむいた。

「な、なんでこの子は小生のペンネームをご存知なのでしょうか?」

 リンタロウがふらっとマリアに近づこうとしたが、マリアはからだの前で手を大きくうごかして拒絶した。

「近づくな。ロリコン!。オレはこんななりをしているが、もう17歳だ。あんたの守備範囲をとっくに超えてるぞ」

「マリア、どうしたんだい。失礼じゃないか」

「セイ!、『文豪ストレイドックス』ってぇ、ニッポンのアニメにでてくンだよ。この男がサ。敵側の抜け目のないオッサンとしてな」

「マリアさま、またアニメですか……」

 スピロはあきれ果てた口調を隠さなかった。


「なんだ、スピロ。アニメのなにが悪い。言っておくがニッポンのアニメは、カートゥンとはちがうからな」

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