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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
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第57話 もっと前の時間から潜るぅ?

「もっと前の時間から潜るぅ?」


 ゾーイ・クロニスからモニタ越しにそう伝えられて、マリアは不諭快さを口元ににじませたままそう言った。

 ミッションに失敗して、聖だけでなくマリアもエヴァも、それなりに気分が滅入っている。なのにまだ丸一日経たずして、ミーティング用カメラの前に全員が呼び出され、次のダイブの指示までされたのでは、そんな口調になるのも当然だ。

「ええ、そうなんです」

 モニタの向こう、ギリシアの施設にいるゾーイは、そんなこちらの事情もお構いなしで話を続けた。

「そうしないと、またおなじ結果になるでしょうって、姉が言うんです」

 翻訳アプリを通じて流れてきたゾーイのことばは、いくぶん平板なイントネーションながらも、ていねいな日本語に翻訳されていた。

「また、おなじ結果って……。前回みたいにミアズマに出し抜かれて、ネルさんを殺されちゃってことかい。ゾーイ」

 聖は一言一言(いちごんいちごん)確認するように、ゆっくりとした口調で訊いていく。おそらくセイのことだから、アプリの翻訳スピードの遅延を考慮しているのだろうと、マリアは思った。

 だが、マリアにはそれがまどろこしかった。こっちは、こっちの知りたいことをすぐに知りたいのだ。

「ゾーイ!。なんでスピロのヤツはそんなに簡単に結論づけるんだ!。次はオレも聖もヘマはしねえぞ」

「マリアさん。わたしにもそれがわからないんです。でも姉はもっと前にある根本原因を取り除かないと、また『未練の力(リグレット)』をうしなわされるだろうって……」

 ゾーイはほんとうに弱った顔をしてみせた。するとエヴァが具体的に話を進めようとばかりに、話に割って入ってきた。

「ゾーイさん。もっと前って、どれくらい前になるか、聞いていますの?」

「えぇ、エヴァさん。聞いています。姉は、一連の事件が起きる前でなければならない、って言ってましたので、おそらく2、3ヶ月前になるかと……」

「聖ちゃん、一連の事件ってなんなの?」

 かがりが素朴な疑問を聖に投げかけた。


「たぶん、『切り裂きジャック』事件のことだと思うよ」


 聖の解答にモニタのむこうからゾーイが反応した。

「はい。『切り裂きジャック』事件です。その第一の犯行が行われる前の時代にダイブするということです」

「どういうことですの?」

 エヴァが眉をひそめた。

「だって、ネルさんは『切り裂きジャック』に殺されたわけじゃないでしょう」

「エヴァさんのおっしゃる通りです。ですが、姉はそこから始まっているのではないか、という仮説を……」

「はん、仮説?。仮説だと、ゾーイ。確信じゃねぇのか」

「マリア、仕方がないさ。きっと手探り状態なんだ。だけど、スピロがそういう仮説にいきついたのなら、なにか根拠があるんだよ」

「そうよ、マリア。なんでもかんでも難癖つけないの!」

 セイの意見に乗っかるようにして、かがりがマリアに注意をうながしてきた。その物言いが勘に障ったが、マリアはそれを聞き流してゾーイに尋ねた。



「で、ゾーイ。肝心のスピロはどこだ?」

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