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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
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第56話 再挑戦、できないの?

 聖と取り残されたかがりは、その場にしゃがみ込むと、『念導液』のなかに半身を沈めてから、背後から抱きかかえるようにして聖の上半身を持ちあげた。

 その姿勢のまましばらく待ってみる。

 が、聖が目覚めようとしないと感じられて、かがりは聖の顔に装着されたゴーグルとレギュレーターを慎重にはずした。しばらく顔を覗き込んでいると、聖がゆっくりと目をあけた。


「やぁ、かがり」


 とても弱々しい笑顔——。

「セイちゃん、マリアとエヴァに聞いたわ。要引揚者を救えなかったって。それと、コテンパンにやられたってことも」

「うん。まったく手がだせなかった」

「力をうしなわされたんでしょ。だったら、いくら聖ちゃんでも無理だと思うわ」

「それでも救わなきゃいけなかった……」

「そんな風に考えないで。依頼主(クライアント)さんはなにか言ってくるかもしれないけど、お父さんはきっとなんとかしてくれる、間違いなくね。だからだれも聖ちゃんを責めたりしないわ」

 だが聖は返事をしてこなかった。かがりはたちまち心配になった。いつもなら、次は何とかしてみせるから、と虚勢をはってでも請け負ってくれるのに、今はその前向きのことばすら聞けない。


「再挑戦、できないの?」


 かがりは躊躇(ためら)いながら尋ねてみた。

 聖は思い詰めたような表情をしたまま口を開こうとしなかった。

「聖ちゃん、ここから出よ」

 かがりは聖のからだをうしろから揺さぶって言った。

「なにかお腹にいれてから、マリアやエヴァたちと次のことを……」


「ごめん、ひとりにしておいてくれないか」


 そう言ってかがりの手をそっとはずそうとした。


 かがりにとってこんなに落ち込んだセイの姿は想定外だった。 

 自分の手を払いのけようとしたセイの手をぐっとつかんで、かがりは抵抗した。

「いや!」

 聖が驚いてうしろに首を曲げて、こちらを見てきた。とても力のない目。


 そんな目の聖ちゃん、わたしは見たくない——。


「わたし知ってるよ。聖ちゃんがひとりで考え事をして悩んでいる時は、自分を責めることしか考えないって。自分のせいにできなかったら、もっと考え込んで、また次の悩みをどこからかひっぱりあげてくるの」

 かがりはうしろからぎゅっと聖のからだを抱きしめて言った。

「だから、わたしは聖ちゃんをひとりにしない。してあげないの」

 聖の耳元に唇をよせると、不退転の覚悟を宣言した。

「だから、聖ちゃん。悔しいこといっぱい言って!。泣きたいなら泣いていい。わたしじゃ、いっぱいになっちゃうかもしれない。でも全部吐き出して!」



「きっと受けとめてみせるから」

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