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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
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第55話 ヤツは相当に落ち込んでいるはずだ

 かがりはすーっとおおきく息を吸うと、思いっきり吐き出してから言った。

「それはちがうわ、エヴァ。聖ちゃんはだれだろうと助けを求められれば、それに応えようとする。もしそれでしくじりを犯したとしたら、それは油断した聖ちゃんのせい!」

 かがりはエヴァににっこりと笑って言った。

「そうでしょ。エヴァ」

「えぇ……。まぁ、聖さんはそう言うでしょうね」

「うん。聖ちゃんはいつだって、ひとのせいなんかにしない」

 かがりは自信をもってエヴァに答えたものの、串刺しされたという聖のからだの状態が気になった。

「お父さん!」

 かがりが中空にむかって声をあげた。すると据え付けの大型モニタ画面に父の夢見輝雄が現れた。

「聖ちゃん、敵に刺されたって!」

『刺された……。そうか。それでヴァイタルが乱れたんだね。それにしても聖がやられるなんて……』

「聖ちゃん、心配ないよね」

 かがりはなかば答えを強制するように、輝雄に問いただした。

「あ、あぁ、心配ない。聖は強いからね。ちょっとやそっとのことで、メンタルをやられることはないさ」

 それを聞いてホッと胸をなで下ろす気分だったが、かがりはエヴァのほうへわざとらしく肩をすくめてみせた。


「ほら、全然、気にすることないって」


 エヴァがすこし申し訳なさそうな顔つきで、にこっと笑い返してきた。それを横目にみていたマリアが、すこし皮肉っぽく言ってきた。

「だが、かがり、聖のほうは、気に病んでいるかもしれねぇぞ」

「えぇ。要引揚者を助けられませんでしたからね。かなりのショックを受けていると思いますわ」

 マリアとエヴァにそう助言され、かがりはふたりの顔を交互に確認した。ふたりとも真摯(しんし)な顔つきで、こころの底から聖のことを心配しているのが見てとれた。

「うん、わかった」

 そう言うとかがりは、聖が沈んでいるプールに足を踏み入れた。くるぶしをぬるりとした感触の『念導液』がまとわりつく。が、かがりはかまわず聖の元へむかい、プールの底にまだ横たわったままの聖を見おろした。


「かがり。ヤツは相当に落ち込んでいるはずだ。目覚めたくないほどにな」


 プールからあがったマリアが、からだにまとわりつく『念導液』を手で拭いながら言った。

「すまねぇが励ましてやってくれねぇか。オレたちじゃあ、たぶん逆効果にしかならねぇと思うからな」

「そうですね。悔しいですけど、ここは一緒にあの場所にいなかった人のほうが適任ですわ」

 エヴァは『念導液』をぬぐおうともせず、からだから液を滴らせながらプールを出た。

 そしてマリアと一緒に更衣室のほうへ向かっていった。

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