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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
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第52話 セイ。現世に戻れ!

「ネル!」


 横を通り抜けていくネルにむかってセイは叫んだ。

 だが、ネルはどろんとした視線を見せただけで反応はない。そのままミアズマがセイの横を通り抜けていく。さらにそのうしろに援護するように、エヴァを追って落ちてきた二体のミアズマが続く。

 三体はすこし進んで角を曲がると、そのまま建物の陰に消えていった。

 それと同時にセイのからだが投げ飛ばされた。ジョンとマイケルの針金の脚が抜け、セイのからだが石畳に叩きつけられる。

「うっ」

 それほどの高さではなかったが、セイはおもわず呻き声をあげた。そこへナイフを振り回して、あたりをとりまくミアズマを威嚇(いかく)しながら、マリアが滑り込んできた。

「セイ。現世に戻れ」

 マリアはセイの顔を覗き込むなり、そう言った。「大丈夫か」などといういたわ.りのことばなど抜きだ。

「マリア、すまない。ぼくはピーターたちにとどめをさせなかった……」

「くそったれ!。いまは謝るとこじゃねぇ。説教はあとだ。だからまずは戻れ!」

「きみらを置いて……」

「セイ様、お戻りください」

 走り込んできたスピロがセイのことばを強い口調で制した。

「あなたがここで命を落とすことは許されません。現世の肉体は死ななくても、なにかしら精神障害(トラウマ)を負う可能性があります」

「いや……、ぼくは大丈夫だ」

 セイはそう言ってたちあがろうとした。だが足に力がはいらなかった。

「セイさん、今回のミッションは失敗なんだよ」

 ゾーイが上から覗き込んで言った。そのうしろには心配そうな顔をした、エヴァの姿がある。

「失敗?。まだ……」

「セイ様、お認めください。残念ながら失敗です。悪魔にしてやられました」

 スピロがセイのかたわらで、悔しそうに顔をゆがめる。

「ネルさんを奪われました。ミアズマは一匹残らずいなくなりました。ピーターもジョンもマイケルも……」

「一匹残らずって……」

「セイ!!。オレたちは失敗したんだよ」

 マリアがセイの胸ぐらをつかんで、顔を近づけて(すご)んだ。

「今回は失敗なんだ。だからはやく戻ってくれ!」

「えぇ、セイ様。まだダイブのチャンスは残されています。もう一度、潜り直しましょう」

 スピロが目元を赤くしてそう言うと、ゾーイもおなじような目でセイに訴えかけてきた。

「そうだよ。セイさんお姉様やマリアさんの言うこと、きいておくれよ。この歴史の修正は、またやり直せるんだ。頼むよ」

 みんなのあまりの必死の形相に、セイは首を縦にふった。

 どのみち戦えても、ろくな攻防にならない。セイはみんなの気づかいが嬉しかった。

「わかった……。現世に戻るよ。きみらも続いて……」


 そのとき、どこからで女性の悲鳴のようなものが聞こえた。セイはハッとして身構えたが、それと同時に自分のからだがふわりと浮き上がるのを感じた。


「どういうことだ。まだ帰還を念じてない……」

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