表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
519/932

第44話 わたしの力、完全にうしなわれていますわ

「ネルさん、立って!。スピロさんもはやく!」


 エヴァはスピロをせきたてたが、彼女は背中を強打したらしく、仰向けになったまま立ちあがれないようだった。エヴァはもう一方の手で、スピロの腕を掴むと力の限りひっぱりあげようとした。

 だが、スピロのからだはもちあがらなかった。

「参りました。わたしの力、完全にうしなわれていますわ」

「そうでしょうね。でなければ、こんなことに……」

 スピロは倒れたままエヴァを見あげながら言った。


「ネルさん、スピロ大丈夫かい!」


 そこへゾーイを背中に負ぶって、マリアの手をひいたセイが走り込んできた。ゾーイの消耗はあからさまで、負われているにもかかわらず、肩で息をしている。粗い息のしたからゾーイが心配そうに声をかけた。

「お……ねぇ……さま。だ……いじょうぶなのかい」

 その様子をみたスピロは顔を歪めながら、ゆっくりと立ちあがった。

「セイ様、なにが起きたのです?」

「わからない。でも力をうしなった。ぼくらは今ただの高校生だ。とてもあの怪物と戦うだけの力はない。逃げよう」

「どこに逃げンだ、セイ!」

 まだセイの手をつないだままでマリアが苛立ちまぎれに言った。

「ウエスト・エンドに戻ろう」

「はたしてウエスト・エンドは安全地帯なのでしょうかね」

 エヴァはつい不安を口にした。それをすぐにスピロがたしなめてきた。

「エヴァ様。今はどうやってこの難局を乗り切れるかだけを考えましょう」

「あ、はい。そうですわね」

 指摘されてみて、自分がネガティブな心境になっていることに気づいた。マリアが毒づくように提案する。

貸間長屋(テネメント・ハウス)ンなか、突っ切るしかねぇだろ」

「そうですわね。このせまっくるしい長屋なら、あの長い脚じゃあ入ってくるのは無理だとおもいますわ」

 マリアとエヴァの助言に、セイが一番近くにある長屋の入り口を指さした。

「あそこに入ろう」

 セイはそう言うなりゾーイを背負ったまま走り出し、長屋の狭い入り口のなかへ飛び込んだ。それにマリア、スピロが続く。だが、ネルの介添えを頼まれたエヴァはまだもたもたしていた。ネルがよろよろとよろめいて、走ろうとはしてくれなかったからだ。しかもあいかわらずなにかをぶつぶつと唱えている。

「ネルさん!」

 エヴァが声をすこし荒げた。


 そのとき、その目の前になにかが落ちてきた。

 細い脚が視界にはいる。ミアズマだった。3体のミアズマがエヴァとネルの前に立ちはだかってきていた。


 エヴァはその怪物を見あげた。

 その瞬間、自分でも意識できるほど目を剥いていた。おもわず悲鳴が漏れそうになる。



 そのミアズマのからだの中心についていたのは、ピーターの顔だった。

「ピ……、ピーター」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ