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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
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第33話 なぜ時間の『先送り』が起きなかった?

「エヴァ様、それは無理というものです」


 そこへスピロがすこし離れた街角から現われ、異議をさし挟んできた。

「ネルさんがいつ、なにものかに、殺されるのかがわからない状況で、ここを離れるわけにはいかなかったのですからね」

 スピロはどこからか戻ってきた様子だった。

「おはよう、スピロ。朝っぱらからどこへ?」

「水を組みに行っていたのですわ。セイ様」

 セイはいつも横に連れているゾーイの姿が見当たらないのに気づいた。

「あれ?、スピロ、ゾーイはどこに?」

「ピーターや子供たちと一緒に水汲み場に並んでいますわ」

「なんであいつはそんな余裕があるんだぁ?。あいつも何度か歩哨(ほしょう)に立たされてるんだ。満足に眠れなかったはずだぞ」

「あの子は体力だけはありますからね。からだの頑丈さはセイ様にも負けてませんわ」


 そう言われてセイは腰がすこし痛いのを思い出した。石畳の上に座り込んでいたのが、それなりに堪えたようだ。反射的に腰に手をやる。

 その瞬間、ふと違和感を感じた。いままで経験した戦いの手順から考えると、どうにも払拭(ふっしょく)しがたい疑問が頭をよぎる。

「それにしてもおかしいな。なぜ時間の『先送り』が起きなかったんだろ?。すぐにネルさんが襲われるとは思えないのに……」

「『先送り』?」

「ほら、この世界は宿主(しゅくしゅ)、つまり昏睡病の患者の、前世にあたる人物の記憶から再構築されている世界だろ。だから前世の人物にとって印象に残らない日だったり、そのひとの『未練』に影響がない日は、一気に先に送りされてしまうんだ。映画の場面転換みたいに」

「ああ……。あれのことですか?セイ様は『先送り』と呼ばれてるのですね」

「え?。あれって呼び名があるのかい?」

「ありますとも。『ダイバーズ・オブ・ゴッド』では『超跳躍(ジョウント)』と呼んでます。アルフレッド・ベスターのSF小説『虎よ、虎よ』に由来する造語ですが……」

超跳躍(ジョウント)』というフレーズに、マリアが反応した。

「あの『超跳躍(ジョウント)』っていうヤツかぁ。あれ、オレ苦手だよ。なんの予兆もなく起きやがるからな。時間も場所もいっぺんに変わった時ゃあ、途方に暮れちまう」

「そうですわね。私は一挙に3年とばされたことがありましてよ」

 マリアにエヴァが続くと、ふたたびマリアが自分の体験談を語った。

「オレは小刻みに5回くらい飛ばされたことがある。あれは最低だ……」


「あれをくらうとちょっとした記憶喪失みたいになっちまう。途中で間欠的に記憶が飛んでいるから、まわりの連中と話が噛みあわなくなるったらなかったよ」

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