第27話 娼婦がヤってるところを見たからって、なに?
「あ、いや、マリア。きみたちは見ないほうが……」
「どういうことだよ?。赤毛のおんなはいたんだろ?」
だが、スピロは事態をすぐさま看破していた。
「ネル様はお仕事の最中だった、ということなのですね?」
「お仕事……?。お姉さま、こんな夜中になんの仕事なんだい?」
ゾーイが屈託のない様子でスピロに尋ねた。
「殿方の相手をしていたのですよ。ここはそういう街なのですから」
「殿方……の……って」
エヴァがそこまで言ってことばを呑込んだが、ピーターはそんな様子などおかまいなしに、ただ事実を端的に事実だけを伝えた。
「ネルはわかくてキレイだから人気の娼婦なんだ。もうすこし時間がかかるかもね」
「ピーター、きみはあんなところ見て、なんとも思わないのかい?」
「あんなとこって?」
「あ、いや、だから……」
「あぁ、娼婦がヤってるところかい」
ピーターが説明するのも面倒くさいと言わんばかりの口調で言った。
「あんなのはとっくに見慣れたよ。ふつうの光景さ。だって、この街じゃあ、5歳にもなれば、おとなの男と女がなにをするのかを知っちゃうからね」
「5歳……」
エヴァはかろうじて、ことばを音にした。ほかの面々は黙ったままだ。
「それにそんなのは若い男女が集まれば、あたりまえにやることだろ?。この街じゃあ、すこし大きくなって路上ですこし稼げるようになると、安宿をみんなで借りて共同生活をするのさ。十歳にもならない子供から十五歳くらいまでの男の子や女の子が一緒に暮らすんだ。ひどいときには1つのベッドに10人くらいの男女が押し込まれて、一晩寝るんだ。男も女もまぜこぜでね。まぁ、そうなればなにが起きるか、わかるだろ?」
エヴァがごくりとの喉をならしてから、おずおずと尋ねた。
「な、なにが起きるんですの?」
「わかるだろ……」
「人間が考えられる行為、すべてが起きるのさ」
全員なにも言えなかったが、ピーターはまったく意に介することもなく続けた。
「ぼくも9歳でおとなになったしね……」
「9歳……で……」
セイはおもわず反応した。
「それがそんなに驚くことなのかい?、セイ。ぼくらはほかを知らないから、そんなものだと思ってたんだけど……」
「いや、ふ、ふつう……じゃない……だろ」
あのマリアの悪態でさえ、しどろもどろになっていた。
「あぁ、そうかもね。むかしある主教様が、アフリカのズールーってとこで、その話をしたら『どんな部族の酋長だって、そんなひどいことは許さない』って叱られたってさ……」
「ひどいよね。裸で生活してる連中にそう言われたンだぜ。それって、歴史上最悪ってことになるんじゃないの?」




