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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
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第16話 イーストエンドを空から俯瞰する

 これはやっかいだ——。


 エヴァは複雑な街並を空中から見下ろしながらそう思った。

 コインを盗まれるやいなや、『ピストル・バイク』を召喚し、四の五の言わせずにゾーイを乗せて、空中高く舞いあがったまではいい。

 だが、すでに夜の(とばり)があたりに降りて、さらに(すす)けた『霧』がまわりを覆いつくすなかで、逃げていく泥棒の姿を追いかけるのは難儀だった。ゾーイの感応力を借りれば容易になんとかなる、と思っていたが、限界があることがわかった。


「ゾーイ、あなたの感応力でも追うのはやはり難しいですか……」

「マリアさん。すまねぇ。泥棒の気がとらえきれねぇんだ」

「やっぱり、あの一瞬では難しかったみたいですね」

「そうさねぇ。ひとことふたことでもことばを交わせてるとちがうんだがねぇ」

 エヴァはため息をついた。

「それにしても、ここはまさに迷宮ですわね」

 

挿絵(By みてみん)


 エヴァは眼下にひろがるイーストエンドの街に目をむけた。

 さきほどまでいた延々とおなじレンガ壁が続く路地は、まるっきり『ダンジョン』のように思えた。闇と霧と臭気によって『五感を』削ぎとられ、進むほどに方向感覚までうしなっていく悪質な地下迷路——。

 だが、上から見おろすイースト・エンドの街は、まるで『迷宮(ラビリンス)』だった。

 都市そのものは狭い区画に計画的に建てられているようにみえた。だが上から俯瞰しておきながら、どこをどう通れば、どこに行けるのかが想像つかない複雑な街のつくりに頭をかかえる思いだった。

「上から見おろしているのに、どことどこが繋がっているか、想像がつきませんわ」

「そういやぁ、ロンドンのスラムは、犯罪者が逃げ込んでも、警察はどうにもできなかったって聞いたことがあるよ。どこの壁に抜け穴があるか、どこの塀を飛び越えるといいか、なんてぇのがわかってるから、警察が追っかけてきても、すぐに逃げられたらしい。それもこの街が犯罪の温床になった理由だって話だよ」

「でしょうね。建物のつくりも複雑ですが、隣接している裏庭とか空き地はもっと複雑でうもの。部外者にはお手上げだったことでしょうね」

 ゾーイの話に頷きながらエヴァは言った。

「ほら、あの裏庭。共同使用される場所なのに、まるでごみ捨て場だわ。それにいろんなとこに建てられているみすぼらしい小屋。あれってきっと勝手に建ててるのよ」

「たしかにそうだねぇ。作業所だったり家畜の飼育所だったり……。まぁ秩序ってもんがありゃしない。それにどれもいまにも崩れ落ちそうじゃないか」

「この湿気ですからね。木材なんかあっという間でしょう」

「こりゃ、盗っ人を見つけるのは難しいかねぇ……」

「それでも見つけねばならいでしょ。スピロがそう言うのですから」

 エヴァが弱気になったゾーイを諌めると、ゾーイはしどろもどろの返事を返してきた。


「あ、ええ、そうさ……そうだよ。盗っ人はかならず見つけてみせるよ」

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