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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
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第12話 ホワイトチャペル2

 上のほうを見回していたゾーイが、みあげたままエヴァに答えた。

「エヴァさん、そりゃ、当然さぁ、もうすぐ夜だからねぇ」

「あぁ、それにきたねぇ」

 呪詛のようにマリアが不満を呟いてきたが、エヴァは無視するように言った。

「ウエスト・エンドのほうはガス灯がありましたわ。ここじゃあ、部屋から漏れる明かりだってほとんどないじゃないですか」

「だって、それがイースト・エンドなんだろ?」

 ゾーイがエヴァに相槌とも否定ともわからないことばを投げかけた。セイが言った。

「でも、たぶん、ここは真っ昼間にきても薄暗いと思うよ。それに……」

 セイは頭に手をやって、先頭をいくゾーイに声をかけた。

「ゾーイ。いったいここはどこなんだい。ボクは完全に方向感覚をうしなったよ」

 それを聞いてマリアが胸をなで下ろすように漏らした。

「なんだ、セイもか。オレはさっきからおなじとこを歩いているとしか……」


 先導していたゾーイがふいに足をとめた。

「セイさん、マリアさん、すまないねぇ。どうにも要引揚者のシグナルが弱くてさぁ……」

「気にしないでください。わたしたちでは本人を目の前にでもしない限り、要引揚者がだれかがわからないのですから。遠くから気配だけでも探れるゾーイさんに頼るしかありませんのよ」

 エヴァがゾーイを気づかうように言うと、マリアも反省するように追随した。

「まぁ、エヴァの言う通りだ。こんな臭くて、目が痛くて、物騒な場所、はやく出ていきたいけどな。オレたちじゃあ、どこの誰をさがせばいいのか……」

「顔や姿は見えてるんだよ。だけど場所がさっきから動いていてどうにも……」

「顔がわかってるのなら、誰かに訊いてみたらどうかな?」

 セイはゾーイに気をつかわせたことが申し訳なく思えて、すこしでも負担を軽減できそうな提案をしてみた。だれかいないか辺りを見回す。


挿絵(By みてみん)



 セイはハッとした。いつの間にか周りの部屋から住人たちが、自分たちを見つめていた。割れた窓から見慣れない闖入者を見つめる冷やかな目——。

 どうやらそれにマリアたちも気づいたらしかった。

「どうもオレたちは浮いているようだな」

「申し訳ありません。どうやらこの程度のみすぼらしい格好では、ここの住人には見過ごせないようでした」

 スピロがため息まじりに謝罪した。

「このぼろ服でですか?。粗末な素材で縫製もよくないし、穴だって空いているのですよ」

 エヴァがスピロの見解に驚きの声をあげた。

「エヴァ様、よく住人たちの服装をご覧ください」

 エヴァにつられてセイも窓のむこうの住人たちを注視した。煙っていて見えにくかったが、それでもそこの住人は、衣服というレベルのものを着ていない気がした。


 ボロ布をからだに巻きつけている、という印象だった。

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