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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ6 切り裂きジャックの巻 〜 コナン・ドイル編 〜
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第7話 お召し物はすべて無駄になったようです 

「ところで、ゾーイ。要引揚者の魂がいまどこにあるか見えてきましたか?」


「ええ、お姉さま。なんとなくだけどねぇ、どっちの方角だけは……」

 ゾーイがためらいがちに川のほうに目配せした。スピロがため息まじりに息をおおきく吐き出した。

「みなさん。お召し物のことでいろいろありましたが、すべて無駄になったようです」

「無駄ってどういうことですの?」

「要引揚者がいる地区は、このような格好が似つかわしくない場所なのです」

「スピロ、似つかわしいとか、似つかわしくないとかあるのかい?」

「えぇ・もちろんですとも、セイ様。こんなかしこまった上流階級の服装などで入り込んだら、どんな目にあうのかわからない場所です」

「おい、どこだ、そんな物騒な場所わぁ?」

 スピロが川の方角を指さした。

「あそこです」


挿絵(By みてみん)


 そこにはセイも見知った建造物があった。

「スピロ、あれって跳開橋のタワーブリッジだろ。なんか作りかけだけど……」

「えぇ、二年前に着工したばかりのはずです」

「では、その手前にある城砦はロンドン塔ですわね」

「なんだ、ここはロンドンの観光名所が揃ってるじゃねぇか。なにをそんなに沈み込む必要があるんだ?、スピロ」

「現代のロンドンでしたらね……」

 スピロはさらに奥のほうを指し示した。

「21世紀なら、あの向こう側に今は市民たちの憩いの場になっている『ロンドン・オリンピック』で使用されたメイン・スタジアムがあるはずですが……」

 スピロはふたたび長嘆息をしてから言った。


「あそこはイースト・エンド。この19世紀末では、悪名高き貧民窟(スラム)です」

貧民窟(スラム)?。そんなのはいつの時代だって、どこの国だってあるでしょう」

 エヴァが怪訝な目をスピロにむけた。

「えぇ、エヴァ様、その通り……。ですが、このイースト・エンドほど絶望的で、むごたらしいほどの貧しさがはびこった街は、歴史上ないと言われているのです」


 そのあまりにも悲観的な話を力強く言い切るさまにセイは驚いた。スピロらしくない。

 スピロは力なく微笑んでから言った。

「さぁ、みなさま。お着替えの時間です」

「おい、スピロ。今度はオレだけ仲間はずれはなしだぞ」


「えぇ。マリア様、ご心配なく。全員おなじですわ……」



「だれがどうとか問題にならないほど、みすぼらしい服ですからね」

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