第2話 切り裂きジャック 第5の犯行
群衆たちの関心はたちまち、凶刃に命を絶たれた哀れな犠牲者の報に惹きつけられた。彼らは目の前の市長の就任祝いの馬車の列などおかまいなしに、新聞の売り子たちに殺到した。ここぞとばかりに、ひとりの少年が扇情的にあおりたてた。
「今度はばらばらで殺されちまったぁぁ!」
新聞が飛ぶように売れていく。
それはパニックに近いものがあった。ひとびとは押しあいへし合いしたあげく、車道に飛び出したり、押し出されたりして、新市長の馬車のパレードをとめた。道路はみるみる人であふれていく。
警備の警官たちは必死になって、それを押し戻そうとしたが、あらたな切り裂きジャック事件にこころを奪われたひとびとは、警官と小競り合いになった。やがて警官が棍棒をとりだして、群衆を力で押し戻そうとすると、今度は沿道の学生たちが警官に飛びかかり、地面に押し倒した。
そこからはまさに喧騒と乱闘の応酬であった。
日頃の警察への、そして行政に対するうっぷんを晴らすかのように、学生や労働者たちが警官に襲いかかった。あたりに悲鳴と怒号が飛び交い、とても収拾がつくような状況ではなくなってしまった。
市長の馬車はその場に立ち往生し、行列はめちゃくちゃに分断されてしまった。警備の警官は襲ってくる群衆から、市長の馬車を守るのが精いっぱいだった。
ホワイトヘッド新市長は黄金の馬車の窓から、狂乱の一部始終を見ながら「なんてことだ……」と歯がみした。彼は怒りと恥ずかしさで今すぐ、この場を立ち去りたい、という思いだったが、それができない状況にさらに腹立たしさが募った。
人生で一度きりの晴れがましい祝賀パレードが、切り裂きジャックのせいで台無しにされてしまったのだ。
「なんてことだ!」
そう吐き捨てて、職杖を握りしめた。
このことは翌日の『スター紙』で『切り裂きジャックは好機を逃さなかった。この病的な怪物は自分の悪名を高めるために、もっとも話題にのぼる日に凶行をなしとげた』と皮肉交じりに報じられた。
だが大勢のけが人や逮捕者をだしたこの騒ぎのおかげで、このときの祝賀パレードは後世にまで語り継がれることとなった。
「なんて嫌な空気なんだ」
暴徒と化した群衆たちが警察ともみ合っている、そのすぐうしろの建物の陰から声が聞こえた。
その声の主は『サイコ・ダイバー(PSY・CO DIVER)』、ユメミ・セイ。
そしてそのうしろにはヴィクトリア朝の豪奢な衣装をまとったチームの仲間、
マリア・トラップ
エヴァ・ガードナー
ゾーイ・クロニス……
そして姉のスピロ・クロニスがいた。
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