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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ5 コンスタンティノープル陥落の巻 〜 ヴラド・ツェペッシュ編 〜
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第119話 エラ・アッヘンヴァル学長の出迎え

「まぁ、まぁ、マリア、ごくろうさまでした」

 マリアが現世に戻ってくると、いの一番に伯母のエラ・アッヘンヴァル学長が迎えた。(ひつぎ)の形を模した催眠装置から起きあがろうとするマリアを、満面の笑みを浮かべながら上から覗き込んでいた。

 ふだんはとくに心配してくれることがなかったのに、その対応に違和感を憶えたが、マリアはロルフに対しての怒りで、からだがはち切れそうだったので、起きあがるやいなや、ロルフの横たわる棺に向かおうとした。向かうというより飛びかかる勢いだ。


 マリアはロルフを二、三発殴らないと気が済まなかった。

 だがそのからだを伯母のエラが押しとどめた。

「マリア、疲れたでしょう」

「おばさん、やめて!。あたしはロルフをぶん殴らないと気がすまないの!」

「ロルフを?。まぁ、マリアなんてことを言うの!」

 伯母はマリアを(とが)めだてしたが、マリアはそんなこと無視して、まわりで作業をしている職員たちに聞こえるよう、これみよがしに大声をはりあげた。

「ロルフは裏切ったの!。任務を遂行しないで、要引揚者を危険にさらしたのわ」

 数人の職員が一瞬ぴくりと手をとめたが、ほとんどはまるで聞こえなかったように、ただ粛々と作業を続けていた。手をとめた者も一瞬ののち、ふたたび手を動かしはじめた。


「マリア、何を言ってるの。要引揚者の魂はちゃんと救われましたよ。今先ほど非公式の外交ルートを通じて、報告とお礼のことばをもらいましたからね」

「ちがうわ。伯母様。助けた人は命は取り留めたかもしれないけど、精神をズタズタにされたのぉ。ロルフは……」

 ガチャンとけたたましい音がした。マリアの首がビクりとすくんだ。

「失敬。ついふらついてしまって……」

 音がした方向を見ると、たちあがったロルフの足元に機材が倒れていた。数人の職員が飛んできて、それを抱き起こそうとしていた。

 ロルフは自分で倒しておきながら、その様子を見てなかった。まっすぐマリアの方を見つめていた。

「やぁ、マリア。ずいぶんの活躍だったね。きみと一緒にダイブできて楽しかったよ」

「あたしは楽しくなんてなかった。あなたが裏切り……」

「アッヘンヴァル学長!!」

 ロルフがマリアのことばを大きな声を発して遮った。

「マリアはとても優秀な子ですね。さすがあなたの自慢の姪子(めいご)さんです。将来必ずや優秀なダイバーになることでしょう」

「ありがとう、ギュンター教授」

「いえ。ですが……、すこし外に出して経験をさせるともっといいと……」

 そう言いいながら、わざとらしくウインクをしてきた。マリアはその仕草が癇に障った。「ええ、ええ。ご心配なく、ギュンター教授。先ほどレオンとノアから報告を受けておりますよ」

 レオンとノアの名前を耳にして、マリアは反射的に二人の姿を探した。二人は部屋の隅のほうで、職員たちと何かことばをかわしていた。

「レオン!、ノア!」

 マリアが大声で名前を呼ぶと、ふたりはこちらをふりむいた。が、彼らは示し合わせたように、軽く手をふってみせると、そのまま話を続けはじめた。


 完全に無視された形だ。

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