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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ5 コンスタンティノープル陥落の巻 〜 ヴラド・ツェペッシュ編 〜
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第108話 なんて独りよがりな考え方!!!!

「彼はすでにこのイスタンブール陥落を()のあたりにして、大きなショックを受けている。ここでメフメトの首を刎ねて、さらに絶望を味わってもらおうっていう趣向なのだよ」

 前に引き摺りだされたジグムントは、いまにもへたり込みそうなほど憔悴(しょうすい)していた。目を見開いたまま、(うつ)ろな視線をさまよわせていた。おそらくここが首都イスタンブールであるとは認識しているようだった。だが視点がさだまらず、いくら目の玉を動かしても、その実、なにも網膜には届いていないように感じられた。


「その子にトラウマを植えつけてどうするつもり?」

 ロルフはうれしそうに微笑みながら、手を横にひろげてあたりを指し示した。

「マリア、この時代、この場所に執着する、この少年の生まれ変わりがだれかわかるかい?」

「生まれ変わり?。この少年の記憶を持つ要引揚者ってこと?。知るはずないでしょ。あたし今まで事前に知らされたことなんてないわよ」

 ロルフはとても冷徹な笑みを口元に刻んだ。


「あるイスラム国家の次期最高指導者と目されているアリー・ハタミ」

「それがなんなの?」

「ぼくらの任務はそのイスラムの重要人物に、これ以上ないトラウマを植えつけてから、現世に連れ戻すことなのだよ。このことでキリスト教陣営は現実世界で、計り知れないほど大きなアドバンテージを得ることができる。マリア」

 ロルフは胸を張って誇らしげに言い放った。


「ふざけるなぁぁぁぁぁぁっっっ——」

 マリアは怒声を発すると同時にロルフに斬りかかっていた。ロルフはマリアの渾身の太刀を受け流し、横に飛び退いた。予想していたかのような動きだった。

「マリア。レディが口汚くののしるものではないよ」

 マリアはロルフにいなされた太刀を反転させて、そのままもう一度斬りかかった。ロルフはその刃を正面から受けた。ガチンと刃と刃が音をたてる。

「あんたらおとながぁぁ——」

 マリアはロルフの額に自分の額をこすりつける勢いで近づけて叫んだ。

「あんたらおとながそんなことだから、どんなに歴史を重ねても、地球上から(いさか)いがなくならないのでしょうがぁぁぁ」

「ばかばかしい。戦争がなくならないのは宗教対立のせいだけじゃない。マリア。人種や性差別、貧富の差、リベラルか保守かなどいくらでも転がっている。でも紛争の種をひとつだけでも無くすことができれば凄いことだと思わないかい」


 マリアは髪の毛が逆立つほどの怒りがこみあげるのを感じた。


 なんて独りよがりな考え方。

 自分たちこそが絶対的な正義で、その反対側にもうひとつの正義があるなどと、頭の片隅にすら浮かばない、あまりに偏狭な思想——。

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