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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ5 コンスタンティノープル陥落の巻 〜 ヴラド・ツェペッシュ編 〜
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第95話 おもしろいショーをご覧いれましょう

「マリアさんの言うとおりですよ」


 ストイカが嬉しそうに相好を崩した。

 その顔はすでに人間とはほど遠い異形に歪んでいて、笑い顔はゾッとするような凄みに満ちていた。ストイカはねっとりとした口調で続けた。

「ロルフ殿。我々は殿を守ることで利害は一致しているのです。もっと協力しあいましょうよ。わたしは力がありますよ。そう、こんな風にね……」

 ストイカが両腕を前にふりだした。

 それを合図にしてストイカの背後に浮かんでいた抗が、弾丸のような勢いで一斉に射ち放たれると、前線でトルコ兵と攻戦中の十字軍兵士たちを次々と串刺しにしはじめた。放たれる坑はあとからあとから空中に出現し続け、次から次へと味方の兵士を串刺しにした。

 あっという間に数十人もの味方が腹を貫かれて倒れていく。

「ストイカ、なにをする!!」

 やっと我に返ったヴラドが悪魔の姿のストイカに激しい怒りをむけた。

 上から人間を睥睨(へいげい)するほどの体躯、見るもおぞましい異形の姿になっても、ヴラドは君主としての矜持(きょうじ)をもってストイカに命令をした。

「今すぐやめろ!、ストイカ!」

 ストイカはヴラドにむかって、わざとらしいほど芝居がかった言い方で応じた。


殿(マリアタ)。おもしろいショーをご覧いれましょう」


 そう言ってストイカが諸手をあげると、杭に刺し貫かれた兵士たちが、むくむくと立ちあがりはじめた。

 だがその兵士は起き上がると、近くにいる兵士に飛びかかった。敵味方関係なく飛びかかるなり、その首筋に鋭い牙をたてた。噛まれた兵士は首から血を噴きだし、その場に倒れていく。だが、すぐに起き上がると、今度はその兵士もあたりの兵士たちを血走った目で物色しはじめる。それはまさに吸血鬼——。

 あちこちで悲鳴があがる。


 杭に刺された兵士のなかには、巨大化を遂げているものもいた。むくむくとおおきくからだを膨れ上がらせて、身長が2メートル以上にまでに達している。

 その個体の表情はストイカのように邪悪さに塗れ、おおきな体躯と相まって恐怖を感じさせる怪物となっていた。その怪物たちがその場でジャンプをすると、背中から身長とおなじほどのおおきな羽根がひろがった。

 何体もの怪物が戦場のあちらこちらから舞いあがっていくのがみえる。

 だが、その姿は遠めには、蝙蝠(こうもり)にしかみえない。人間大以上のサイズの蝙蝠(こうもり)の怪物が、杭を携えたまま、イスタンブールの都のほうへ飛んでいく。

 そのあいだにも戦場は徐々に阿鼻叫喚(あびきょうかん)の修羅場と化していた。吸血鬼に噛まれた兵士たちが、敵味方関係なく襲いかかり、生きている人間はだれもが追いやられはじめていた。吸血鬼は仲間を増やしていきながら、イスタンブールのテオドシウスの城壁へと迫っていく。

 突然味方がこちら側に襲ってくる化物と化したのを、目の当たりにした城内の兵士たちはパニックになり、闇雲に矢を射かけ、銃を撃ちまくっていた。


 だが吸血鬼は刺しても、切っても、撃っても、簡単には死ななかった。

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