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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ5 コンスタンティノープル陥落の巻 〜 ヴラド・ツェペッシュ編 〜
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第89話 心のあり様が変わるのだ

『心のあり様が変わるのだ』

 ロルフはそれがまるでだれでも知っている常識であるかのように、さらりと言った。


『救われた要引揚者たちがキリスト教徒の勝利を目の当たりにすれば、現世に戻ったあとに神への信心を強くする。そしてそれをなしとげた我々『ダイバーズ・オブ・ゴッド』の存在意義を強く後押ししてくれる』

『そんなことは、熱心に教えを説けば良いことではないですかぁ』

昏睡病(コーマ・ディジーズ)(かか)るひとは、キリスト教徒だけではないのだよ。人種や年齢、宗教、貧富の差を問わず罹るのだ。そしてその者たちは人生観を変えるほどの、過去の歴史的大事件をみずから経験する。それを我々、神の使いである『ダイバーズ・オブ・ゴッド』が救うんだよ。その救われたひとはどれほどの感銘を受け、どれほどの感謝をすると思う?』

 そう言ってロルフは余裕を口元に浮かべて、レオンのほうにむけた。

『実際に救出された感謝の気持ちを、多額のお金であらわしてくれたひともいたしね』

『あぁ。思い出しましたよ。先日、アメリカのIT企業のCEOが昏睡病から生還してきたあと、バチカンへ莫大な寄付をしたって……』

『彼の前世はたいした人物ではなかったがね』

『ギュンター教授。あなたもそこに?』

『もちろんだとも。十二使徒の数名とともに赴任したがね。彼の前世は後継者争いで暗殺された無名のエジプトのファラオだった。だが彼の引き揚げ(サルベージ)は、過去最大の成果をもたらした』

『お金のためって言うんですかぁ』

 ノアがわずかな気遣いもなく、ずけずけと意見した。


『ノア、活動資金と言ってもらおうかね。すでに民間企業や国営の財団など、各国にライバルもいるのだ。とくにアメリカのアダム・ガードナーが創設した『コーマ・ディジーズ財団』は救助成功率の高さで有名だ。表向きは治療薬を使っているとはなっているがね。いまでは民間企業などに所属しているダイバーのなかからも、十二使徒が選出されている。決して『キレイごと』では、ひとの命は救えないのだよ』


 レオンは学費だけでなく寮費まで免除になっている自分たちの奨学金が、どこからでているかがわかったが、それでもロルフの理論には承服しがたい部分があった。

『ギュンター教授。要引揚者からの支援が必要なのは理解しました。ですが、それとキリスト教の過去の誤ちを正すことは関係ないと思います』

 ロルフはその質問を待っていたと言わんばかりに微笑んだ。

『レオン、きみの言うことももっともだ。だがすでに意味のない歴史修正は現実の世界でおこなわれている。過去の文学や映画などの表現を否定することでね』


『「ポリティカル・コレクトネス」……ですか?』

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