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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ5 コンスタンティノープル陥落の巻 〜 ヴラド・ツェペッシュ編 〜
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第83話 兵士たちは押し潰されて血の柱を吹き上げた

 その風が吹き抜けた場所にいた兵士はその場で次々と潰れていった。


 血を吐きだす間もなく、からだが押し潰されて血の柱を吹き上げた。見える範囲のそこかしこで、兵士たちは敵味方を問わず、その場で血の花を咲かせて、肉塊と化していく。

 空中に跳躍していたマリアにも、その強力な攻撃が襲いかかった。マリアはからだの正面で、手にした剣の腹をむけて受けてたった。


 それは『風の壁』。


 まるで見えない巨大な壁が押しつけられてくるようだった。

 満身の剣圧でかろうじて打擲(ちょうちゃく)されるのを回避したが、正面から押し込んでくる強大な力は、押し戻すことも跳ね返すこともできない。マリアは落ちることも上がることも許されず、空中に浮いたままうしろへと後退していく。

 できるのは、ただ手を突っ張って、圧に潰されないようにするだけだった。


「こ、これが『十二使徒』の力っていうのぉぉぉぉ」


 マリアは食いしばった歯の隙間から叫んだ。

 眼下では自分が押し戻されているスピードで、兵士たちが『風の壁』に次々と押し潰されていっていた。ぐちゃぐちゃに潰れた兵士たちの(むくろ)がフィールドを埋め尽くしていく。

 その災禍(さいか)を目と鼻の先でぎりぎり逃れることができた兵士たちは、目の前で次々と血だるまになって潰れていく仲間たちの姿に呆然となっていた。

 難を逃れられた好運を喜ぶなど、頭に(つゆ)ほども浮かばないほどの衝撃。

 その場に泣き崩れる兵士はまだましなほうで、現世に現出した地獄を()の当たりにして、(うつ)ろな目でぶつぶつとなにかを呟いたり、ケラケラと狂った笑い声をあげる者も多かった。


 マリアのからだは宙空に浮いたまま、どんどんとうしろへと押し流されていた。ちらりと後方に目をくれる。テオドシウスの外壁がぐんぐん背後に迫っていた。


「あたしを押し潰そうってわけ?」


 マリアはロルフのいるヴラドの本営をにらみつけた。その時自分を宙空に押しつけている『風の壁』の頭頂部が光の反射の加減でかいま見えた。自分の頭のすぐ上あたりで、この風の塊はとぎれていることがわかった。

「なら利用させてもらうわ!」

 マリアは背後に思いっきり足を伸ばして、背後に迫ったテオドシウスの外壁を蹴飛ばして、上へ跳躍した。

 ロルフの風の塊の上に足がかかる。


 ロルフ、いい足場をありがとうね——。


 そこはまるで城壁の上にある『歩廊』。

 マリアはその風の壁の歩廊を勢いよく走り出した。空のうえを走っていくマリアの姿に、誰も気をとめるものはいない。今起きた大惨事に敵も味方も恐れおののくばかりで、とても上空に注意を払う余裕などなかった。


 マリアが空中からロルフの方へ突進していく。

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