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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ5 コンスタンティノープル陥落の巻 〜 ヴラド・ツェペッシュ編 〜
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第77話 スルタンはご自分で命を守ってくださいな

「ノア、あたしをまだなんかできるなんて思わないことよ、ノア。あたしの能力は『剛力』。やろうと思えば傀儡師(くぐつし)のあなたを引き摺ってでも動けるわよ」

 それだけ言うと、ヒュンと剣をふるってからメフメトに声をかけた。

「お騒がせしたわ、ごめんね、スルタン。それじゃあ、ヴラド・ドラキュラの命を頂戴(ちょうだい)しに行って参りますわ」

「マリア、私はどうすればいいの、かね」

「あら、スルタンはご自分で命を守ってくださいな。あたしの任務はドラキュラを倒すことで、スルタンを守ることじゃないもの」

「ふ、なるほど。たしかにそうだ」

 メフメト二世は苦笑いをうかべた。そのやりとりを地面に転がったまま見ていたノアが、負け惜しみを言ってきた。

「は、きみがどんなに力が強かったとしても、ロルフが簡単にヴラド・ドラキュラに近付けさせやしないさ」

「そうね。すくなくともノア、あなたより手を焼くと思うわ」


 そのときマリアはふいに外の音がこもるのを感じた。

 ノアに憑依(ひょうい)したときのようなくぐもった感じとはちがう。まるで飛行機に乗っているときの鼓膜が詰まったような感覚——。

 気圧が変わったのだ。

「スルタン、みんな伏せて!!」

 マリアは刀を投げ捨てると、力の限り地面を蹴って、メフメト二世に飛びかかった。襲われると感じたラドゥが剣を振るおうとする。マリアはその隙を与えず、ラドゥとメフメトふたりの腰に組みついて、勢いよく押し倒した。

 その瞬間、風の刃がすぐうしろの『鋸壁(きょへき)』の凸部の上のほうを削りとった。倒れたマリアの頭にその欠片がぱらぱらと降り注いでくる。

「マリア、貴様、スルタンになにを!」

 スルタンともども押し倒されたラドゥがすばやく立ち上がり、剣をふりあげマリアに怒りをぶつけた。が、自分と一緒にメフメト二世を警護していた兵士たちが、その場に倒れているのに気づいて、ことばを飲み込んだ。

 四人の兵士はすでに絶命していた。首を刎ね飛ばされたり、胴体をまっぷたつにされて自分たちのすぐ脇に転がっていた。

 数十メートル先からゴトンという重たい音が聞こえた。高さ二十メートルを超える、内城壁の塔の根元がえぐれて、前面部分が崩落しはじめていた。塔の前の通路にいた兵士たちが、落ちてくるレンガに驚いて、あわてて逃げる。

「まったく、ロルフったら、容赦ないわね」

「ロルフ?。これはロルフがやったのかいぃぃ?」

 脚を怪我させられて、座り込んでいたノアがマリアをみあげた。

「ほかにだれがいるのよ?。まぁ、でも倒れてて良かったわね、ノア。でなきゃ、あなたの首、飛んでたわよ」

「そ、そんな。ロルフがそんなことをするわけないよぉぉ」


「なに言ってるのよ。あなたは、とっくに用済なのよ。ばれちゃったンだもの……」

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