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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ5 コンスタンティノープル陥落の巻 〜 ヴラド・ツェペッシュ編 〜
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第75話 そうはいかないよ。マリア

「そうはさせない」


 ノアが声を押し殺して言った。

 マリアは『鋸壁(きょへき)』の凹部に足をかけて、いままさに下に飛び降りようとしたところで動きをとめた。

「なにもできないでしょう」

「いいや、なにもできないのは君のほうさ、マリア。ぼくがなにもせずに君の命令に従ったと思うのかーーなぁ」

 マリアはノアの戯言を無視して、ジャンプをしようとした。

 が、体が動かなかった。みえないなにかに縛りつけられたように、からだが硬直し、足はまるで地面に打ちつけられたようにピクリとしなかった。

「マリア、君にぼくの意識を共有させたときに、ぼくも君の意識を共有させてもらったーーよぉ。意識下の深層の部分をねぇーー。ま、グランド・シューレに入ったばかりじゃ、言ってる意味わからないかーーなぁ」

「はやい話があたしの自由を奪ったっていうわけね」

「それだけじゃないーーよぉ。ぼくはきみを操ることもできーーるのさぁ」

 そう言ってノアはニタリと笑った

「ぼくの本当の能力は『操演』。千里眼や人の心を読み取るのも、ひとの意識に潜りこむのも、そのための手段でしかなーーいのさぁ」

 マリアは顔を伏せて、奥歯をかみしめた。

「ははぁ、マリア、悔しいのかぁーーい」

 それまでのただの鬱陶(うっとう)しいしゃべり方が、やたら粘着質で威圧的なものに変化してきている。その言い方は気色わるくて、マリアはさらに苛立ちをつのらせた。

「いいえ。悔しくなんかないわよ。ただね……」


「腹を立ててるわよ、ノア。あなたたちを仲間だと信用した自分にね!」


「それは残念だったねぇーー」

「ええ。人類の歴史に何度も潜って学んでたはずなのに、人を信用するなんていう幻想を抱いてしまった自分に腹がたつ。人は利害が一致するから群れて、その均衡が保たれているうちだけは仲間、と呼ぶって、嫌っていうほど知ってたのに」

「そんなことはなーーいさ」

「きれいごとはもうたくさんよ」

 マリアは剣を構えたラドゥのうしろに隠れたまま、二人のやりとりを聞いていたメフメト二世にむかって言った。


「スルタン。お願いをきいてくださる?」

「お願い?」


「えぇ。この男を、ノア・ツイマーマンを殺していただけるかしら」

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