表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ5 コンスタンティノープル陥落の巻 〜 ヴラド・ツェペッシュ編 〜
415/932

第64話 オスマン・トルコ帝国スルタン メフメト二世

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

 マリアが群衆のむこうに見える『ハギア・ソフィア大聖堂』の屋根を眺めていると、大宮殿の敷地から兵士たちが現れて、なかにはいるように促した。すぐ右手に競馬場(ヒッポドローム)の外壁が見えたが、両側をひときわ屈強な大男たちに囲まれ、すっかり外の様子は見えなくなった。

 いくつもの建物のあいだを抜けていくと、奥に庭園が現れた。その横にある丸い尖塔の建物の前に、物々しいほど武装した兵士たちが待っていた。さきほどまでついてまわった兵士たちに、それらの兵士が加わった。

 どうやらそこがスルタンが待ち受ける宮殿のようだった。

 マリアはビザンチン文化の象徴ともいえるモザイクを見あげながら、足元の豪奢(ごうしゃ)絨緞(じゅうたん)の上を歩いていった。


 正面の(いか)めしいおおきな扉がひらくと、玉座にスルタンが座っていた。

 まだ若々しさを感じさせる顔立ちで、『征服王』と呼ばれ西洋を思うがままに牛耳っているようには見えなかった。

 スルタンの周囲には勇猛だったり凶暴だったりする猛者が、すぐにでも飛びかからんばかりに剣を構えていた。

 しかしスルタンのすぐ横にはべる男は華奢なからだつきに、すこし病的な目をみせていて、とても衛兵には見えなかった。それどころか東洋人ではなく、西洋人の顔立ちだった。

 マリアはそれがメフメト二世のお気に入りで、ヴラド・ドラキュラの実弟であるラドゥだと見当をつけた。


「おまえか?。悪魔(シャイターン)の子と言うのは」

 スルタン、メフメト二世が口を開いた。ふんぞり返るように玉座に座り、重々しいほどに装飾品を身につけ、ことさらに権威を見せつけようとしているわりには、存外に高い声で、マリアはやや拍子抜けした。


「シャイターン?。それってなに?」

 マリアがおもわず疑問を口にすると、ノアが小声で説明した。

「マリア、サタンのことだよ。悪魔だ」

「サタン?。まぁ、あたしのようなちいさな子によくそんなことを。あたしはマリア・フォン・トラップ。悪魔(シャイターン)なんかじゃなくて、傭兵みたいなもの。まぁ、未来から来た傭兵だけど……」

「未来からきた傭兵?。おかしなことを言う?」

「信じられないかしら?」

「いや……。あのヴラド三世は信じているのだろう?」

「まぁ——。あれくらい活躍してみせて、やっと信じてもらえたってとこからしら」

「あぁ。そうだな。我が軍はことごとくやられた」

「だって、弱いンだもの」

「ふ、よくも言ってくれる。だが今、そなたはその弱い軍に捕まっておるのだぞ。そんな口を叩いていいのかな?」

「捕まってる?」

 マリアははぁーーっとおおきく嘆息した。

「このおじさん、なにかおおきな勘違いしてるみたい。ノア、あなた説明してあげて」

 そう言ってノアに説明役を任せた。が、ふいに大役を投げられて驚いたノアが、また騒々しく声をあげた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ