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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ5 コンスタンティノープル陥落の巻 〜 ヴラド・ツェペッシュ編 〜
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第62話 あの子はほんとうにタフだと思います

「どうした不安そうな顔をして。もしかして、マリアちゃんとノアを心配してる?」

 ロルフがレオンの顔を覗き込みながら訊いた。

「あ、いえ……。ひとのことを心配している余裕はぼくにはまだ……。それに、この世界ではもし殺されても、肉体が死ぬわけではないですし……」

「死ぬよ」

 レオンはぎくりとした。ロルフはいつだって軽々しく、そういうことを口にする。

「精神がね。レオン、キミもわかってるだろ」

「あ、はい、ええ。もちろんです。だからノアはすこし不安です」

「マリアちゃんは?」

「マリア……ですか。あの子は……あの子はほんとうにタフだと思います。ちょっと精神が傷ついたところで、案外どうってことないかもしれません」

 つい本音を漏らしたが、すぐにレオンはすこしことばが過ぎたと思った。が、ロルフは吹きだして笑った。

「ははは、なるほどねぇ。キミのマリアの印象はそうなンのか。そんなにあの子はタフかい」

「ええ。生半(なまなか)のことでは揺らがない精神力は、おそらく挫折というのを経験したことがないからだと思います」

「レオン、キミはマリアには失敗が必要だって思ってる?」

「そうすれば人の痛みがわかり、マリアはより強くなれると思います」

 ロルフがおどけて口笛を吹くまねをした。

「これ以上強くねぇ。それは勘弁してほしいモンだね」

「くやしいですが、それくらいの逸材だと……」


「そりゃ、キミもおなじサ」

「いえ。そう言っていただくのはうれしいですが……」


「レオン、きみこそ唯一無二の逸材なンだよ」

 口調こそ軽々しかったが、真剣さはけっしてうしなわれていないとレオンは感じた。

「攻撃力の強いダイバーってこの世界にはいっぱいいるンだよ。ボクをふくめてね。だけどね、キミほどの防御力を持つ者は、世界でも数えるほどしかいないんだ」

「そ、そんなことは……」

 ロルフはレオンの肩に手を置くと、ゆっくり力強く言った。

「もっと自信もちなよ。キミは自分の本当の価値を知らなさすぎる」

 レオンは面とむかってそう言われて、心が震えた。からだが舞いあがるのではないかという気分になる。

「だからボクはキミをスカウトしたンだよ」

 ロルフはそう言ってレオンの肩をポンと軽く叩くと、ヴラドのほうへ向かっていった。

 それを見送りながら、レオンは嬉しくて仕方がなかった。


 あんな頼もしいひとが、企んでいることが間違えているはずがない——。

 そう、間違いがあるはずがないではないか。


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