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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ5 コンスタンティノープル陥落の巻 〜 ヴラド・ツェペッシュ編 〜
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第59話 コンスタンティノープル、正面突破

「正面突破ってぇぇぇ、嘘だろぉぉぉぉ」


 ノアは大声で叫びながら走っていた。

 ほとんど身を隠す場所もないなだらかな丘陵を、勢いにまかせて駆け降りている。ほんの数メートル横の地面が突然、ドーンという爆音とともに土をはねあげる。それを横目で見ながら、ノアは進路を斜めにとる。だが、走るスピードは緩めない。斜面の傾斜に勢いをとめられず、走らされているので緩められないだけだ。

 すると今度は先ほどまで走っていた進路上で、爆音とともに土砂がおおきな柱のように、ふきあがった。

「マリア!。頼むよぉぉぉ。目立たないでぇぇぇ。ぼくら、大砲の標的になってるってぇぇぇぇぇ」

 ノアが前をいくマリアにむかって叫んだ。

 マリアはけらけらと笑いながら、ピョンピョンと跳躍を繰り返していた。並の人間には不可能な4〜5メートルほどの跳躍で、戦場を駆け抜けていく。それだけジャンプすると味方からもよく見えたが、テオドシウスの壁の前で迎え撃つトルコ軍からも丸見えで格好な標的になっているのも間違いなかった。

「マリアぁぁぁ。お願いぃぃ。跳ぶのやめてよぉぉぉぉぉ」

 ふたたびノアの近くに大砲が着弾して、大量の土砂をはねあげた。

「あはははは」

 マリアは心から楽しそうに笑いながら宙を舞う。そこへトルコ軍が放った大砲の弾が跳んできた。

「マリアぁぁ、気をつけてぇぇぇ。右から弾ぁぁ、いや左からもぉぉ、きゃーーー、正面からもぉぉ。()けきれないぃぃぃ」

「ノア、どーいうこと?。まったく役にたたない感知能力ね」

 そう言ってマリアはポーンとからだを空中に舞いあがらせた。そこに三方向から放たれた砲弾が襲いかかってくる。

「まったく、うるさいったらないわ」

 マリアは大剣を引き抜くと、空中でからだをくるりと横に回転させた。手にした剣を横に寝かせて、その腹の部分で右、正面、左の順番で次々と砲弾を薙ぎ払う。そしてそのまま遠心力ににまかせて、砲弾を地面に叩きつけた。

 勢いをうしなった砲弾がボトリ、ボトリと落下していったが、その真下を走っていたノアは、自分の真横を掠めるように落ちてきた砲弾に悲鳴をあげた。

「うわああぁぁ。マリア。ぼくを殺す気ぃぃぃ、殺す気なのかぁぁ」

「ノア。ちょっとは静かになさいよ」

 マリアが中空から地面に降りたつと、ノアと併行するようにして走りながら言った。

「あなたって、敵の攻撃の軌道が読めるんでしょう。だったら避けられるじゃないのぉ」

「バ、バカ言うなよぉ。ぼくって砲撃手の心を読みとって、軌道を推測してるだけだよぉぉ。予測できるわけじゃないんだよぉぉぉ」

「だったら、あたしの心も読めばいいでしょ」

「だからぁ読めないんだってばぁ、マリア。きみもロルフもレオンもね」

 ノアは息せききって、マリアにむかって喚き散らした。


「ふうん。つまんない能力だこと。あたし、ロルフがなにをたくらんでいるか知りたかったのに」

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