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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ5 コンスタンティノープル陥落の巻 〜 ヴラド・ツェペッシュ編 〜
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第46話 トルコ軍に攻撃をしかけろ!

「レオン。トルコ軍の攻撃をしのげるかい?」 

 ロルフがふいに打診してきた。レオンは一も二もなく返事した。

「ええ、もちろんです」

 ロルフ・ギュンターの打診は絶対だ。断るなどという選択肢は持ちえない。

「ただ、あまりにも広範囲すぎます。全部を防ぐというのはさすがに……」

「んじゃあ、どンくらいの範囲ならイケんの?」

 ノアは目の前にひろがるドナウ川の対岸をざっと見渡した。

「そうですね。ぼくを中心にして両側に1キロメートル程度ですかね。あの程度の大砲の砲弾なら、それくらいの範囲はなんとかなり……いえ、なんとかしてみせます」

「あの程度の大砲?」

 ブラドがレオンが口にした言葉を聞き逃さなかった。

「レオン、貴様はウルバン砲をあの程度と抜かすか?。コンスタンティノープルもあれには苦しめられたのだぞ。あの大砲がどれほどの威力だと思っている!」

殿(マリアタ)、まだそのようなことをおっしゃいますか?」

 ヴラドは威圧してきたが、レオンは毅然とした態度で言った。

「殿、そこにいるロルフ、そしてマリアが殿のご期待を上回る『力』をお見せしたかと思います。わたしも今からそれをお見せしたく存じます」

 レオンは自信がみなぎっていくのを感じた。先だってまで、このブラドの前でずっと萎縮し続けていたのが嘘のようだった。この男は理不尽きわまりない暴君だが、『使える』と値踏みしたとたんに、態度を一変させる切り替えの早さがあった。

 おそらくマリアもロルフも瞬時に、カリスマや横暴のなかに潜む、その実務的な臭いを嗅ぎ分けたのだろう。ならば自分もそこにつけ入ることができる。

 ヴラドの威厳に飲み込まれることも、へりくだることもない——。


「殿、こちらからトルコ軍に攻撃をしかけていただけますか?」

 レオンは恭しい態度でヴラドに申し出たが、なかば命令と言ってよかった。ロルフのやり方だ——。

「いいだろう。ストイカ!。攻撃命令を」

 ストイカは逡巡するように視線を泳がせたが、すぐに君主に従った。


 やがてしばらくしてから、前方のワラキア軍から号砲とともに煙が立ちのぼった。と、数秒後にトルコ軍の陣地に土煙がはねあがった。幕舎までは届かなかったが、前線で渡河の準備をしている兵士の数人がそれに巻き込まれた。

 そこから一気に緊張が高まった。

 対岸のほうでは指揮官らしき男が、何かを強い口調で命令しはじめ、砲手とおぼしき連中が砲座のほうへ駆け出していく。そのすぐうしろを補佐係らしき若者たちも続く。



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