表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ5 コンスタンティノープル陥落の巻 〜 ヴラド・ツェペッシュ編 〜
390/932

第38話 ロルフは『風』の能力の持ち主。あたしは……

「あぁ……、大丈夫だ」

 ヴラドはそう答えたが、こころなしか顔が蒼ざめているようだった。

 マリアはすこしがっかりした。

 すごい英雄ときかされていたのに、人の忠告はきかないし、自分の身が危険にさらされたら、ふつうの人とおなじように怖けづいている。完全にぶっ飛んでいてくれてて、あやうく死にかけたことさえ、鼻で笑ってくれればとも思ったが、どうやら眼鏡違いだったらしい。

 だが、それとは逆にストイカは興奮のせいか恐怖のせいなのか、やたら高揚してみえた。

「マリア殿、いまの剣はなんだったのです?」

 ストイカが高揚感を沈めるように、胸を押さえながら尋ねた。

「今の?。ああ、ロルフの剣のことね」

「そ、そうです」

「ロルフは『風』の能力の持ち主。だから剣に『風の力』をまとわせて、一気になぎ倒すことができるの」

「風の力……ですか。では、マリア殿、あなたはどんな力をお持ちなのです?」


 マリアはあまり自分の能力を口にするのは好きではなかったが、興味を剥き出しにしたキラキラした目に見つめられて観念した。


 が、そのとき、広場の中央の床石の上にべったりと張り付いて倒れていたはずのトルコ兵が、がばっと跳ね起きるのが見えた。マリアの目が男と合う。

 男は迷うことなくマリアのほうへ突進してきた。彼は血塗れになっていたが、どこも怪我をしていなかった。地面に伏せていたことで風に巻き込まれなかったのだろう。からだは血だらけだったが、おおかたあたりの犠牲者の血が付着しただけなのだろう。


「マリア殿、お逃げください」

 ストイカが叫んだ。

「あの男はあなたを人質にとるつもりです」

「あ、そうなの?」

 マリアはストイカの警告を軽く受け流すと剣を身構えた。男が剣をふりあげてマリアに襲いかかった。その血走った目と歯を食いしばった必死の形相から、男の決死の覚悟がみてとれた。

 男が剣を振り下ろした。その剣先をマリアの剣が薙ぎ払う。

 ゴキン、と鈍い音がした。

 その兵士の剣がマリアの剣とぶつかったとたん、彼の腕は上腕の真ん中からぼっきりと折れていた。まるでぶかぶかの服の袖をだらしなく垂らしているように、男の上腕がだらりと垂れ下がる。

 広場に乾いた金属音を響かせて剣が床石に転がり、男はその場に崩れ落ちた。

 マリアは背中の鞘に剣を戻すと、ストイカにむかって言った。


「ストイカさん、今見たとおりよ……」

 マリアはすこしだけ恥じいるように、肩をすくめて言った。



「あたしの能力は『剛腕』……、つまり力業(ちからわざ)っていうヤツ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ