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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ5 コンスタンティノープル陥落の巻 〜 ヴラド・ツェペッシュ編 〜
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第35話 ロルフ 御前での試技

 マリアはロルフの剣の腕前を知っていたので、大声でヴラドとストイカのほうへ声をかけた。

「ドラキュラのおじさん。危険だから、上のほうにあがるか、建物のなかにはいって!」

 だが、ヴラドはちらりとだけ視線をむけただけで、無視を決め込んだ。仕方がないので、マリアは物見台へあがる木の階段を指し示しながら、レオンとノアに言った。

「二人とも、ここは危険だから上にあがりましょう」


 マリアたちが階段の踊り場まで駆け上がっているあいだに、ストイカの指示で三人の兵は手と足の枷の鍵をはずされた。

 ロルフが三人の対面になる場所に陣取ると、腰に手をかざした。一瞬、黒い風が腰の近くを吹き抜けたかと思うと、ロルフは剣を手にしていた。それはマリアとおなじ刃の広い両刃の「ブロードソード」。マリアとおなじ長さなのに、ロルフがそれを構えると、すこし短いように見えた。


 ストイカが三人の兵士たちの数メートル先に置かれている武器を指さして、なにかを叫んだ。トルコの言葉だったので意味はわからなかったが、おそらくロルフを殺せば解放してやる、という内容なのだろうとマリアは推測した。

 

 それを聞くなり、三人の兵は躊躇(ちゅうちょ)することなく走り出して、石畳の上におかれた剣を手にしてすぐさま身構えた。

 イェニチェリが得意とする刃先が曲がった特殊な剣。

 さすが精鋭部隊と言われるだけあって、その構えに隙がない。


「ロルフさん、ほんとうにひとりで大丈夫なのかぃ?」

 ノアが口元をふるわせながら呟いたが、レオンは拳を握りしめて歯がゆそうに声を荒げた。

「くそう。ロルフさんはなぜぼくを使ってくれない。ぼくが盾になればあんな兵士など近寄らせないのに」

「ばかね。ドラキュラおじさんは、ほんとうに強いか知りたいって言ってンのよ。戦わせないってどうなのよ」

「しかし、もしロルフさんがここでやられるようなことがあったら、残されたぼくらはどうすればいいんだよぉぉぉ」

 ノアが弱々しい声で訴えたが、マリアは肩をすくめて言った。

「あら、ノア。あなたさっきロルフが嘘ついてたの気づかなかった?。あのひとさっき一万人相手なら手こずるとか言ってたけど……、あれ嘘よ」

「え?」


 その時、一陣の風が広場を吹き抜けた。

 風——?。

 レオンが思わず呟いたので、マリアは説明した。

「えぇ、そうよ。ロルフの力は『風』。兵一万人とか言ってたけど、ひと桁ちがうのよ……」


「本当にあのひと、嘘つき」


 そう言った刹那(せつな)、トルコ兵のひとりが剣を振りかざしながら、ロルフに飛び込んでいった。その兵士の跳躍力は目を見張るほどで、十メートルは離れていたロルフに、あっという間に迫っていた。


 兵士が剣をふりあげてロルフに飛びかかっていった。

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