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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ5 コンスタンティノープル陥落の巻 〜 ヴラド・ツェペッシュ編 〜
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第19話 VRゲームと前世の記憶のダイブ、どうちがう?

 レオンはこの時代から抜けだしたくて仕方がなかった。早く現代に戻ってVRゲームの世界に浸っていたいと、こころの底から願っていた。

 

 むかし友人の誰かに聞かれたことがあった。

『前世の記憶のなかにダイブするのと、VRゲームに没入するのとなにがちがうのかい』

『なにもかもさ』 

 レオンはそう言い放ってから続けた。

『VRと違って、五感そのものが実際とおなじなんだ。視覚と聴覚だけじゃない。嗅覚、味覚、触覚もが、まったくおなじなのさ』

『じゃあ、その世界で刺されたら、現実とおなじように痛い?。いや、下手すると死んじゃう場合があるのか?』

『あぁ、たぶん痛い。でも実際に刺されたことはないよ。でもこの世界ではぼくらには「神の力(パワー・オブ・ゴッド)」と呼ばれる特別な才能(ギフト)を授かるからその痛みは現実のものとはちがうのさ』

『それはゲームでいうところの「チート」みたいなもの?」

『半分当たっているかな。それを使いこなせる能力があって、はじめて発揮できるからね。武器や道具を自在に出現させたり、人間離れした動きができたりね』

『すごいな!。きみはなにができるんだい?』

『ぼくはディフェンス専門でね、だれも真似できないほど強固なシールドを作れるのさ。世界レベルのね』

 そう言って胸をはった。


 だが、いまその能力があることが恨めしく思えてしかたがなかった、

 尋常ならざる恐怖の時代。

 ここが脳内の仮想空間であると認識してもなお、恐怖から逃れられない。

 自分とおなじ人間が積み重ねてきた『歴史』なのに、そこに『魔』が潜んでいる。そしてその『魔』が凶刃(きょうじん)となって、自分たちを無残に切り刻もうと、虎視眈々(こしたんたん)と狙っているのがわかる。


 だからこそ逃げるわけにはいかなかった。

 アッヘンヴァル学長から、あなたたちは神から試練を与えられたのだ、と(さと)されて、再ダイブに同意したのだ。それは失敗だったという気持ちばかりが湧いてでてくるが、それでも自分に課せられた任務を思いだして、心を奮い立たせるしかなかった。

 

 はたして自分は活躍できるのだろうか……。

 自分の能力はこの時代にマッチしているものだろうか……。

 天才ロルフ・ギュンターの前でなにかしくじりをおかしはしまいか……。


 考えれば考えるほど、不安がこころにもたげあがってくる。

 そのなかでもなによりも、その天才が一目をおいているマリア・フォン・トラップという少女に、自分たちの自信を打ち砕かれはしまいか。


 それが一番、怖くてならなかった——。

 

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