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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ2 不気味の国のアリスの巻 〜 ルイス・キャロル 編〜
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第7話 だれが正解なのか、はやく教えてくれ

 その問いかけに『トラウマ』たちが一斉に耳をそばだてたのがわかった。

 その『問題』に興味がそそられたのだろう。お互いを牽制していたかと思うと、すぐにぞろぞろと、お茶会の席の近くに集まりはじめた。

 まずは、好奇心旺盛な『やまね』が口をきった。

「時間の単位の中で一番、愚かなヤツだって?。そんな問題、簡単さ、それは『分(minute)』に決まってる。なにせ『つまらない(minute)』だからね」

 ものしり自慢の『大いも虫』が、あたりの化け物たちに言い聞かすように言った。

「簡単な問題だ。『愚かな(Weak)』だろう。だったら『週(Week)』さ」

 それに異議を唱えたのは、『眠りネズミ』だった。

「そいつは引っかけさ。一番愚かなのは『秒(Seconds)、あいつらは一番速いつもりでいるけど。いつも複数で群れてないと、『二番目(Second)』にしかなれやしない』

 小動物の『トラウマ』たちが口々に、自分たちの解答を披瀝しはじめる。

 三月ウサギがテーブルの上に飛び乗ると、指をたててみんなに弁舌しはじめた。

「『時間タイムさ。なんでぼくらがティーパーティーを開いていると思うのさ。ティータイムの『T』は『TIME』の『T』。あいつらの愚かさをあざ笑うために開いているパーティーなんだからさ」

 その意見に、おかしな帽子屋が喰ってかかった。

「バカ言っては困る。一番愚かなヤツは『時間(Hour)』だよ。わしがなんで『時間』と喧嘩したか知っているのかね。あいつが愚かだからだよ」と得意げに言った。

「いや、参った。あたりだ」

 セイはみんなにむかって降参とばかりに手をあげた。その様子にセイの周りに集まってきた大勢の化け物たちが、答えを聞こうとセイに視線をむけた。

 トラウマたちがみな顔を見合わせ、うれしそうに顔をゆがめる。

「だれが正解なのか、はやく教えてくれ」


「答えは『時間(Hour)』だ」

 おかしな帽子屋が、ほかの化け物にむかって得意げに胸をはってみせる。

「ほら、わしの言う通りだ」

 セイは自分のまわりに、庭中に散逸していた化け物がみな集まってきていることを確認して、満足そうに言った。


「よくわかったね。一番愚かなのが『我々(Our)』だなんてね」


 セイはそう言うなり、地面にてのひらをおしつけて念の力をこめた。セイの手のひらから、目にみえない波動のようなものが押し出され、地面を波紋のように這っていく。

 その波動がまわりを取り囲む化け物にふれると、一瞬にしてパチン、パチンと弾けとんでいく。波紋がひろがっていくと、その場に集まっていた化け物たちが、遥か先まですべて消し飛んでいた。

『これで『TーPARTY』……、『トラウマ・一行(PARTY)』、が全滅だとありがたいんだけどね』


「きゃーーーー」

 はるか上のほうから、アリスの叫び声が聞こえた。

 セイがゆっくりとみあげると、数十メートルもあろうかという巨人がアリスを掴んで、こちらにむかってきていた。性悪さを絵に描いたような顔つき、はち切れんばかりにでっぷりとした体。彼女はハートをあしらったドレスを着ていた。



「ハートの女王……のお出ましか」


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