表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ5 コンスタンティノープル陥落の巻 〜 ヴラド・ツェペッシュ編 〜
363/932

第11話 この任務自体そのものが人権無視も甚だしい


 マリア・フォン・トラップ——。


 ロルフ・ギュンターはこの少女と過去に何度か潜ったことがあった。

 ドイツの『ダイバーズ・オブ・ゴッド』の精鋭が集まる、学生の合同訓練で最年少ダイバーとして参加していた。いや、それだけではない。ヨーロッパの全体の精鋭ダイバーの合同訓練の場にも招集されていた。

 そこでももちろん最年少だった。


 だがマリアはヨーロッパで一番の最年少ダイバーであるだけではなかった。


 ルーキーの中ではもちろん、ベテランダイバーに負けないほどの屈指の能力をもっていた。エラ・アッヘンヴァル学長がこの姪っ子をことさらに気にいっているのもよくわかる。

 いや鼻高々であってもなんら不思議ではないだろう。


 だがロルフが一番興味をひかれたのは、レオンとノアが気がふれんばかりにおののいたヴラド公の串刺し刑の惨状を目のあたりにして、(ひる)むどころか高笑いしそうなほどに、余裕があったということだった。

 いくつもの修羅場をくぐってきたと聞いても、そのように冷静でいられる胆力を簡単に身につけられるとは思えない……。

 もしかしたら、なにかが麻痺しているのかもしれない……。


 ロルフはゾクッとした。

 人の命を救うために、その能力を持てるものに頼らざるを得ないのはたしかだ。エラ・アッヘンヴァル学長が、その才能を育てようとしたのも間違いではない。だが、まだ初潮をむかえるかどうかという少女に、そこまでの経験させていいものだろうか……?。

 この任務自体そのものが、人権無視も甚だしいのではないかという疑念がよぎる。


 

 ふいにうしろの荷台で声があがった。レオンとノアだった。

「どうしたのサ?」

 ロルフは正面に目を向けたまま、反射的に声をかけたが、答えたのはマリアだった。

「たぶんこの森を抜けちゃうから怖いんじゃないかしら」

「怖い?」

「だって、すぐそこが串刺しの森だったんだもの」


 マリアはそう言いながら、正面を指さした。ロルフは指さされた方向を見た。だが、月明かりに照らされたそこは、遥かかなたまで続く広い平地がひろがっているだけだった。

「ここなのか?」

 ロルフは目の前にひらけてきたその風景をみながら、思わず呟いた。

「そうよ。さっききたときはこの広い野原いっぱいに、串刺しされた人の杭がたくさん刺さっていたわ」

 マリアは淡々と情景を説明すると、そこから推察される客観的事実も述べた。

「よかった。ちゃんとすこし前にこれたみたい」


「で、これからどうすべきかねぇ?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ