表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ5 コンスタンティノープル陥落の巻 〜 ヴラド・ツェペッシュ編 〜
362/932

第10話 度し難い!!

「それだけじゃないわ。エラ伯母様に連れられて行った中国は最悪だった。あの西太后っていうオバサン。何千個所も切り刻んで、しかもそれを自分で食べさせるっていう拷問は最悪だったわ。たぶん人間が考えたなかで一番残酷なんじゃないかしら」

「ふーーん、それでもよくもまぁ、串刺し刑をの森をみて驚かなかったね」


 マリアは片目だけをこちらにむけて答えた。

「驚いたわよ。だってあんなにいっぱい刺さってるの、はじめて見たもの」

「なによ。驚いたの、そっちのほうなの?」

 ロルフはマリアがそう(うそぶ)いたのを、すこしあきれる思いでいた。2万人もの串刺しの森をみたら、自分でも冷静でいられるか自信がもてない。

 自分の横にいるこのちいさな女の子は、並々ならぬモンスターだと、あらためて思い知らされる。ロルフはその思いをぐっと呑込んで、薄っぺらい口調でマリアをほめそやした。

「マリアちゃん、すっごおい。タフだねぇ」

「こんな歴史。あたしにとっては、ただの『生々しい』ヴァーチャル・リアリティ・ゲームっていうだけよ」


「ところで、本当にふたりは大丈夫?」

 マリアがおおきく伸びをしながら訊いた。

「大丈夫だろ……。たぶん。ちょいと刺激が強すぎただけサ」

「まったく……、【度し難い】」

「ど……し……、マリアちゃん。それなに語?」

「日本語よ。あたしのお気に入りのアニメにでてくるの」

「は、まだ日本の『カートゥーン(子供向けアニメーション)』見てるんだ」」

「アニメよ、ロルフ。カートゥーンじゃないわ」

 ロルフはマリアの脅すような、あまりに真剣な口調に驚いた。

「ごめん。よくちがいがわからないんだ。で、その日本語、どういう意味よ?」

「すくいようがない、ってーいう意味よ」

「ひどいな。ロルフもノアも臭いにやられただけさ。すこし落ち着けば問題ない」

「ほんとかしら?」

「あぁ。彼らは信仰心が厚いンだ、今回の苦難は神からの試練だと思えば、難なく乗り替えられるはずさぁ」

「信仰心……?。そんなのがこの世界で役にたつとでも?」

「そう言わないでくれないかな。これでもそーいうのを大学で教えてンだからさぁ」

「ふうん、なんか年寄り臭いこと教えてるのね。あなたまだ若いんでしょう。たしか20……」

「4。24歳だ。優秀だったから飛び級して……」

「歳なんか関係ないんじゃないかしら。充分おじさん臭いわよ」

「マリアちゃん、ひどいなぁ。キミくらいの歳だと、成人したひとはみんなおじさんに見えちゃうモンさぁ」

「ロルフ、そうやって説教しようとするところが、年寄りだってことよ」


 マリアはそれだけ言うと、胸のまえで腕組みをしたまま目を閉じた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ