第222話 オレがプラトンをぶっ飛ばす
「マリアさん。なんてことを!。エンジンに突き刺さったらどうなさるおつもりです」
「いやぁぁ、わりい。とっさにやっちまった。だけど、このバイクにエンジンなんかねぇだろ。こいつはおまえの精神力で浮かんでんだから」
「ん、まぁ、それはそうですが……」
「それよかもう一度近づいてくれ。オレがプラトンをぶっ飛ばす」
「あのデウス・エクス・マキナは図体のわりには、案外動きは敏捷ですよ」
「なぁに、心配するな。スピロとゾーイが今、足どめをするところだ」
そうマリアが断言したので、エヴァがあわてて眼下に目をむける。すぐにデウス・エクス・マキナのうしろ側にスピ口とゾーイが回り込んでいるのを確認して声をあげた。
「いつのまに?」
「おまえがアルキビアデスとくっちゃべって、プラトンの注意をひいている間にだ。だがまさかあっと言う間に終わらせるとは思わんかったぞ。あやうく気づかれるとこだ」
「で、なにをするつもりなんですか?」
「あれだよ」
マリアは眼下にみえるスピロとゾーイが、松明を準備しているのを指さした。
「スピロがおそろしく愚鈍って言ってただろ。その通りさ。こんな有り合わせの木材で作った巨人なんかが脅威になるわけねぇだろ」
「ですね」
エヴァがバイクのスロットルをひねり、ぐっと車体を上昇させた。マリアは正面を見すえたまま、背中とゆっくりと手を伸ばし大剣の柄に手をかけてから言った。
「プラトン!。足元を見ろ」
プラトンがマリアのことばに促されて、下方に目をむけた。
その目が大きく見開かれる。
その足はすでに火がついていて燃えはじめていた。
「真夏のカラッカラの天気だ。すぐに火が広がっちまうぜ」
マリアは威勢よく啖呵を切ったが、プラトンは悄然とした目をマリアに向けてきた。その表情は弱々しく精気が感じられない。
「だからわたしは下級悪魔なんでしょうね。どんなに知恵を絞っても知恵はでず、どんなに力をふるっても脅威にならない……。マリアさん、わたしは悔しい。こんな歴史的な賢者に取り憑いたというのに、結局その能力を使いこなせませんでした」
「そうか?。頭は切れたと思うぜ。こっちにスピロ・クロニスっていうのがいなきゃ、いいとこまで追い詰められたかもな」
「マリアさんはお優しい。人間のそういうところ……」
下から黒煙があがってきて、プラトンの姿が見えなくなった。マリアはプラトンにむかって叫んだ。
「プラトン!。オレがおまえの引導を渡してやる。光栄に思え」