第202話 未練の力（リグレット）を頼む！！
「未練の力を頼む！」
ゾーイから思念が飛び込んできた瞬間、エヴァは面喰らった。
そういうのに慣れていなかったし、なによりもあまりに強い力に一瞬、めまいがするほどだったからだ。
「エヴァさん。セイさんがジョー・デレクさんの魂を呼びだしてくれって。未練の力を頼むって！」
エヴァは頭痛に顔をしかめたが、すぐさまうしろをふりむいた。有無を言わさずタルディスの後頭部を鷲掴みにする。
「エヴァさん、なにを！」
タルディスが文句を言いかけたが、エヴァはそれを力で黙らせた。暗黒の力がタルディスの頭を突き抜ける。
「ジョー・デレクさん、でてきてください！」
かなり強い口調で言った。だが、ジョー・デレクの魂は表にでてこようとしなかった。エヴァは思いっきり舌打ちをすると、タルディスの頭を握りつぶさんばかりの力をこめてもう一度命じた。
「ジョー・デレク！。でてきなさい！。殺しますわよ」
そのあまりの剣幕に、タルディスの頭の上に半透明のジョー・デレクの顔が姿を現した。
「ジョー・デレクさん。元の世界に戻りたいですか！」
「ああ……。もちろんだとも……」
あまりに気のない返事にエヴァは、一瞬殴りつけてやるか、このバイクからふり落としてやろうか、という思いにかられた。
「強く願ってください。本気で戻りたければ！」
「強くって……言われても……」
「だったらここで終わりよ！。現実世界に戻ることも、オリンピックで金メダルをとる夢ももうお終い！。いいの！、それで！」
エヴァがなかばぶち切れて言い放つと、ジョー・デレクはふいに目覚めたように目を刮目して、感情を高ぶらせてきた。
「いやだ！。わたしはオリンピックにでる。オリンピックで金メダルを獲るんだ」
「獲れっこない！」
「いや。わたしは、絶対に、絶対金メダルを獲ってみせる！」
ジョー・デレクの口から本気の思いがほとばしりでた。
その未練の思いが光のパワーとなってジョー・デレクの、そしてタルディスのからだを包み込んだ。
その光景にエヴァの目が輝く。
「ゾーイ。セイさんに伝えて！。今、未練の力送りましたって」
