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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ4 古代オリンピックの巻 〜 ソクラテス・プラトン 編 〜
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第201話 絶望しろ、セイ!

「どういうことだ……」


「アンドレアルフス様は瞬時にこの戦車の下に、少女を送り込むことができる」

「だったら、だったら、なぜ今すぐやらない!」

「ふ、セイ。いったはずだ。我々に与えられた新しい任務は『セイに絶望を与えよ』だと。おまえに絶望を与えるのに、時間は必要だ」

 スフィンクスが淡々とこちらに逃げ道がないことを伝えると、今度は反対の右側の戦車から、あの若い御者が変貌したアルゴスが、百個の目を細めてほくそ笑みながら言ってきた。

「セイ、おまえが止まろうとしても、コースを外れようとしても結末はおなじだ。まぁ、ゴールを通過してもおなじだがな」

 セイは自分がどういう罠に嵌められたのかがわかった。怒りがこみあげてくる。だが、実際に声を荒げたのはゾーイだった。

「きさまぁ」

 ゾーイは腰元から剣を引き抜き、アルゴスのほうへ斬りかかろうとした。だが、それをスフィンクスが邪魔をした。触手のようにぬらぬらと動くたてがみが、ゾーイの腕や脚に巻きついて、あっという間に羽交い締めにしていた。

「ゾーイ!」

 セイがからだを乗り出して、ゾーイの肩を引寄せながら言った。

「ルキアノスさん、やめてください!」

 だが、スフィンクスはにやりと口元をゆがませた。

「絶望しろ、セイ!」

「セイさん。まだ諦めんじゃないよ。お姉さまが作戦を考えてくれてるんだよ」

「作戦!。ゾーイ、どうすればいい」

 セイは癇癪(かんしゃく)をおこしたかのように感情を爆発させた。

「この戦車を、宙に浮かべるのさ」

 ゾーイがそう言った瞬間、ゾーイの背後で乾いた笑いがはじけた。スフィンクスだった。

「うわははははは。戦車を浮かべる?」

 その笑いにつられるようにセイの背後のアルゴスが、「キキキ……」と小動物のような笑い声をあげた。

 だが、彼らがあざわらうのももっともだった。

「浮かべる?。この戦車を?」

 気づくと、セイもおもわずそう呟いていた。身体中の毛穴から汗がどっと噴き出す。

「そうだな。空ならばどうやっても戦車で()くことは無理だな」

 スフィンクスが感心したような口調で言ったが、すぐさまゾーイの耳元に口をよせ囁くように続けた。

「できるというのならな」

 セイはゾーイの目をみた。ゾーイの目には不退転ともいえる意志があった。だが、セイはその決意を感じても、そんな芸当は不可能という気持ちは払拭できなかった。

 どんなに力をためて念動力(サイコキネシス)を使ったとしても、馬四頭もろとも戦車を持ちあげるなどできっこない——。


 でも。ゾーイはできると信じている——。

 そしてここに使わせたスピロもゾーイができると……。


 力が必要だった。とてつもなく強力な力が。

 だが、もしそれがかなわなかったとしたら——。

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