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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ4 古代オリンピックの巻 〜 ソクラテス・プラトン 編 〜
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第189話 あれほどまでにすごいとは……

 カチンというなにかのスイッチをはね上げる音——。


 次の瞬間、ドオォォンという爆発音がレース場に(とどろ)き、怪物たちが暴れていた北側の土手の中腹あたりが吹き飛んだ。ピストル・バイクからミサイルが放たれたのだとすぐにわかった。着弾した場所からはもうもうと煙がたちあがっていたが、ウォンとアクセルを吹かす音がしたかと思うと、エヴァたちは煙のなかに一気に飛び込んでいき、バイクはアッという間に見えなくなった。


「あれじゃあ、ピストル・バイクじゃなくて、バズーカ・バイクかキャノン・バイクじゃないのかね」

 ゾーイがつくづく感心している様子で呟いた。

「確かに……。それにしてもマリア様もエヴァ様も腕利きのダイバーだとは聞いておりましたが、あれほどまでにすごいとは……」

「お姉さま。残念だけど、あまりにも力量差がありすぎだよ。あたいはミノタウロスに襲われたとき、なんにもできなかったのに、マリアさんはそいつを一撃で倒して、物足りねぇって言ったんだよ。逆立ちしても(かな)いやしないよ」

「口惜しいですね。わたくしは、ゾーイ、あなたこそ、この世界でもっとも優れたダイバーだと思っていたのですよ……。でも上に上がいるものです」

「世界レベルを思い知らされってとこかねぇ」

「ですが、おまえはこの姉のせいで、幾重(いくえ)にもハンデを背負っているのです。恥じることはありません」

 そう言ってゾーイを励ましたが、スピロは自分が悔しくて、情けなくてしかたがなかった。ゾーイに詫びる気持ちばかりが込み上げてくる。スピロはゾーイにその気持ちを伝えなくてはならないと感じた。

「ゾーイ……」

 スピロは口を開いた。が、それ以上ことばは続かなかった。


 ゾーイのうしろに怪物がいた。それも一体ではない。

 おおきな体躯のミノタウロスは鋭い牙を見せつけ、ケンタウロスは涎を垂らしながら、狂気に駆られた目をこちらにむける。そのうしろには、なにとなにが合体したかもわからない、おぞましい姿のキマイラが唸り声をあげていた。それを従えているのは人間の頭が四つ生えている怪物。おそらくケロベロスを模したものだろう。だが、その頭は首元からではなく、頭の上に縦に四連で並んでいた。

 あわてて周りを見回すと、いつの間にか何百という怪物たちにスピロたちは取り囲まれていた。ゾーイが無言のまま、ゆっくりと腰から剣をひきぬく。

 小さく、ひ弱な剣、一本——。

 ミノタウロスが天空にむかって咆哮する。それに呼応するように、ほかの怪物たちが威嚇するようなジェスチャーをしてみせる。

 スピロはゾーイの顔を見た。

 ゾーイは蒼ざめていたが、勝ち目のない戦いを戦い抜く覚悟しているようだった。


 足がすくむ——。


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