表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ4 古代オリンピックの巻 〜 ソクラテス・プラトン 編 〜
295/932

第183話 あわてるな、戦っているのはユメミ・セイだ

 マリアはめんどうくさそうにため息をつくと、「ゾーイとおんなじ心配するんだな」と言いながら、東側の折り返し点のその先にある観客席を指さした。

 数本の剣がだれかを囲いこんでいる様子が、遠めにわかった。

「あぁ……。セイさんの技ですね。剣の牢屋っていうか……」

「言うな。ちょいとパクらせてもらった」

「マリア様……。あれでタルディス様を守れるのですか?」

「心配するな。オレが遠隔操作で守ってる。それにもう怪物どもは現れねぇよ。エヴァが観客どもを逃がしちまったからな」

 マリアがスピロにウインクしながら、軽口を叩くと、ゾーイがそれを大声で否定した。

「いや。でてきたよぉ」

 ゾーイは競馬場のトラックのほうに向けられていた。不安いっぱいの目。エヴァはその視線の先に目をむけた。

 それはこちらから一番遠くになる北側のレーンにいた。とんでもなく大きな体躯の巨人だった。ミノタウロスとは比べものにならないほどのおおきさ。それが北側のレーン上に立ちはだかり、走ってくる戦車に攻撃を仕掛けているようだった。

 その巨人がふいにからだを折り曲げると、おおきく手をはらう動作をした。とたんに数台の戦車が馬ごと宙を舞っていた。


「サイクロプス——」

 スピロがうめくように言った。ゾーイが呆然とした表情で声を荒げる。

「ま、まずいよぉ。今セイさんが奥の折返し点を曲がったよ。あの怪物のいるレーンに突っ込むんじゃないかぃ」

 ゾーイのひきっった表情がスピロに伝播したのがわかった。たちまち顔が蒼ざめていく。


 さすがにエヴァもあわてた。

 エヴァはすぐさま手のひらを下にむけると、地面に呼び出した結界からふたたびロケット・ランチャーを召喚しようとした。

 ここから狙ってあの巨体を何とかできるのは、それしか考えつかない——。

 銃床がゆっくりとせり上がってくる。だが、そのスピードはあまりにも遅い。これでは間に合わない。焦りがつのる。

 エヴァはちらりとマリアを見た。だが、マリアは両手を頭のうしろで組んだまま。二タニタしながら巨人の方を眺めていた。手に武器を持つわけでも、すぐに行動をおこせるように備えるでもなく、ただ傍観しているだけだった。

「マリアさん!。何をしてるんです、この緊急時に!。セイさんを助けないと」

「バーカ、あわてんな、エヴァ。あそこで戦車を駆っているのはセイだ。ユメミ・セイなんだぞ。なにか心配することが一ミリでもあるのか?」

 口汚いのは相変わらずだったが、その声は真剣そのものだった。そこに本気でセイを信じているマリアの気持ちがあふれていた。

「そうでしたわねぇ……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ