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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ4 古代オリンピックの巻 〜 ソクラテス・プラトン 編 〜
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第182話 エヴァ、おまえのせいで怪物がいなくなったぞ

 ひとけがすっかり引いた観客席にエヴァたちがたどりつくと、仏頂面をしたマリアと安堵感を顔いっぱいにしたゾーイが出迎えた。

 まだメインレースの決着がついていないというのに、南側の土手側の観客席はもう数えるほどしかいない。残っているのはおそらく、ドラクマ硬貨の雨に気づかなかったかぼんくらか、レースにとんでもない大金をかけている馬鹿くらいだろう。真向かいの北側や折返し点のある東側の土手の観客席の人々は、南側の観客になにが起きたのか首をひねっているにちがいない。


「あら。マリアさん、やけにご気嫌ななめのようですね」

「エヴァ。おめぇのしわざか?。もう怪物が現れなくなったぞ」

「それは……、よかったこと」

「ざけんな。オレはまだぜんぜん暴れちゃいねえんだ」

 マリアがエヴァに詰め寄ると、ゾーイが脇から仲裁を買って出た。

「マリアさん、嘘はいけないよぉ。さっきミノタウロスを相手に大暴れしたじゃないか」

「ミノタウロス……を?」

 スピ口が思わず声をあげた。あまりにおおきな声だったので、マリアが居心地わるそうに頭をかきながら言った。

「スピロ、おまえたち姉妹はなんでおんなじ反応するかなぁ?。そんな大声をあげて驚くほどのこっちゃねえだろ。たったの一体だ。たったのな」

 最後の「たったの」はエヴァを至近距離から睨みつけながら発せられた。この欲求不満をどうしてくれる、という恨み節が眼力(がんりき)にやどってみえる。

「たった、じゃねえでしょうよ。あんなバカでかい怪物なんだよ」

 そう言いいながらゾーイが南側の土手の中腹あたりを手で指し示した。エヴァはゾーイに促されるように視線をむけると、縦半分にぱっくりと切られて、べろんとだらしなく倒れている大きな怪物の残骸が目にはいった。スピロはその姿に息をのんだが、エヴァはローマで戦ったミノタウロスをすこし懐かしく思い出していた。

「まぁ。こちらのミノタウロスはやけに大きいのですね」

「あぁ、デカさだけはな」

 マリアがエヴァの感嘆の声に忌々しげに言った。

「だが、スッカスカでなんの手応えもねぇ。見てくれもローマで戦ったヤツより恐ろしい顔つきしてるのに、一撃であのざまだ」

 マリアが憤懣やる方なしという態度で言ったが、スピロはますます驚きの表情を強くした。

「マリア様。あれを一撃で倒されたんですか?」

「あぁ、そんなに感心しなくていいぞ。クソみたいに弱いヤツだったからな」

 だがスピロは悪態じみた謙遜をするマリアに戸惑いながら、マリアとミノタウロスの死体を交互に見つめていた。エヴァはふいに重要なことに気づいて声をあげた。


「マリアさん!。タルディスさんは?」


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