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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ4 古代オリンピックの巻 〜 ソクラテス・プラトン 編 〜
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第179話 セイさん、敵だ。気をつけなよ

 ガタガタとやかましい車輪の音のおかげで、なにを言っているかは聞こえなかったが、その表情はとても応援をしているようには見えない。

 折り返し点にさしかかる。タラクシッポスの祭壇が右側に見えてきた。


 マリアにお願いしてもう一度タラクシッポスの幻影を出現させてもらうか——。

 そうすればこの身動きのとれない状況を打破できるかもしれない。


 正面の観客席を見ると、あふれそうな群衆の中からマリアの姿を捜した。肩車されていて頭ひとつ抜きんでているはずだし、暗雲が頭上に浮かんでいるはずだった。

 だが、そんなものを見なくてもすぐに見つかった。

 マリアは肩車されたまま、引き抜いた大剣をふりあげて頭上でふりまわしていた。


 マリア、なにしてる——?。


 そんな疑問が頭にもたげたがその瞬間ゾーイの叫び声が頭にとびこんできた。

『セイさん、敵だ。気をつけなよ』


 敵——?。


 だが、セイにはその正体を考える時間がなかった。そしてその必要もなかった。分離帯に飾られた祭壇をなぎ倒すようにして、一頭の馬が飛び出してきた。折り返しの反対側のレーンを走っていた馬が、分離帯を横切って逆走してきたのだ。馬はおそろしい勢いで、セイの戦車の横っ腹にぶつかった。セイの戦車の片側が持ち上がり、外側に傾いで倒れそうになる。あわてて手綱を引き絞るセイ。

「くそぅ!!!」

 毒づきながら渾身の力で戦車を内側にひっぱり、戦車の姿勢を制御する。

 ドンと荒々しい着地。なんとか転倒はふせげたが、(わだち)に車輪をとられてガタガタと上下に振動しつつ戦車が蛇行する。

 そこへ並走しながら様子を伺っていた馬がもう一度、セイの戦車にからだをぶつけてこようとしてきた。そうはさせまいと、セイはムチを馬にむけてふるう。


 が、そのムチの先を馬が掴んでひっぱってきた。


 くそ、ムチをもってかれる——。


 そう唇をかみしめて、ハッとした。

 なぜ、馬がムチを掴んでいる——?。


 セイはムチをふるった左手の先に視線をむけた。 

 それは馬ではなかった。ひきしまった四本脚で土を豪快に蹴散らし、軽やかに空を舞うように走るその雄々しい姿はたしかに馬だった。だがその首の根元から人間の上半身が生えていた

 セイとおなじ御者の衣装であるキスティスを身につけている——。

 

「ケンタウロス!!」


 セイはおもわず声をあげた。

 その瞬間、セイはマリアが大剣を抜いていたのを思いだした。もしかしたらあの周りにも悪魔の手先が現れていたのかもしれない。


 正体を看破された『悪魔』が、なりふりかまわぬ攻撃をしてきたに違いなかった。

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