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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ4 古代オリンピックの巻 〜 ソクラテス・プラトン 編 〜
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第174話 どういうわけか観客には見えてないようなんだよ

 ゾーイがあわててそちらのほうに目をむけた。


 先ほど戦車がクラッシュした場所の近くに、何本も突き刺さった大剣がタルディスの周りを取り巻いていた。タルディスはかろうじて目から上がでている状態で、パッと見た目は剣の牢屋にでも閉じこめられたような状態だ。

「マリアさん。まずいよぉ。いくらまわりに剣で突き刺して囲ったところで、今みたいな怪物が現れたらひとたまりもないじゃないかぁ?」

「剣で突き刺した?。おまえ、なに見てる?。よく見てみろ」

 そう言われてゾーイはもう一度よく目をこらした。たしかになにか違和感がある——。

 と、ゾーイはそれに気づいた。

「剣が下を向いてないじゃないか。ありゃ、どうやってあそこに固定してるんだい」

「固定なんかしてねぇよ」

 そう言うなりマリアが、右手の人さし指をピンとはじいてみせた。すると、タルディスを囲む剣が、ずずっと上にもちあがって、水平に並んだ。

「あれはオレが操っている」

「まさか?。こんな遠くからあれだけの数の剣を操ってるっていうのかい?」

 ゾーイは心底おどろいて、思わず感嘆の声をあげた。だが、あまりの驚愕っぷりに、どうにも居心地わるくなったのか、マリアは頭をかきながら弁明してきた。

「あ、いや、そんなに感心されても困るンだが……。ありゃ、セイの技の受け売りだからな」

「セイさんの?」

「あぁ。セイの必殺技のひとつだ。だからあんまり褒めるな、恥ずかしい。それより、ここにいる観客どもは、あんな化けモンが現れたのになぜ逃げなかったんだ?」

「それなのさあ。どういうわけか観客には見えてないようなんだよ」

「やっぱ、見えてないか……。タルディスも四本首の馬が見えてなかった」

「四本首?。ケロベロスみたいじゃないかい」

「三本じゃなくて四本、犬じゃなくて、馬だがな……。ずいぶんな怪物がいたもんだぜ」

「こりゃ、トゥキディデスの悪魔の仕業かねぇ。下級悪魔にしちゃあ、たいがいのモンを出現させてるようだけどねぇ」

「は、たいしたことはねぇ。これだけ人がいるんだ。材料には困らねぇだろうしな」

「材料?。どういうことなんです、マリアさん」

「なんだ、ゾーイ、知らねぇのか。悪魔は無から自分の手先を産み出すことはできねぇ。そこにいる人間を使って……」

 そこまで言って、マリアが口をつぐんだ。なにか思い当たるふしがあるのか、顎に手をあてて考え込む。


「そうか……。わかったぜ、ゾーイ。あのトゥキディデスに憑依していた悪魔。あいつ下級悪魔だから、つえー怪物を作りだせねぇ。とはいえ、下級は下級なりに考えるわな。どうすりゃオレたちやセイを倒せるか……。そうすりゃ当然、質より量にいきつく」

「量って、あのデカさってことかい?」

「あぁ。おおきな怪物を作り出すために、ここにいる何万人という観客が必要だってことなんだよ。ま、その考えそのものが下級なんだがな」

「つまりあれだけの怪物に観客の誰も気づかないってことは……」



「そうさ。もし怪物が見えちまったら、怪物製造の材料に逃げられちまうじゃねぇか」


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