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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ4 古代オリンピックの巻 〜 ソクラテス・プラトン 編 〜
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第159話 悪魔の一人に逃げられました

 マリアが黙り込んだ。

 ゾーイは気軽に軽口を叩いてしまったせいで、マリアの気嫌をそこねたのではないかと心配した。

「そうだとよかったんだがな……」

 一瞬ののち絞り出すような口調でマリアが言った。

「あいつには、セイには、かがりっていうガールフレンドがいる。セイのことを信じて現世でずっと待っている女だ。かがりはどんな時でもセイのすぐ近くにいて、苦しみや悲しみも共にしてきた。たぶん今もセイの近くでまんじりともせず待ってるだろうよ」

「マリアさん、でもその子は待ってるだけなんだろ。何もできずに。だったら、一緒に戦ってるマリアさんのほうが有利なんじゃないのかい」

「いいや。1%も望みがねえよ。セイのことを信じて、信じて、なんにもせず、ただじっと待ってられるんだぞ……」

 一瞬、声が詰まりかけたように感じたが、マリアはさばさばとした口調で言い切った。

「勝てっこねぇだろ」


 ゾーイはマリアになんと答えていいかわらかず、ことばをかけあぐねた。が、その時、頭の中にスピロの声がとびこんできた。

「ゾーイ、申し訳ありません。悪魔の一人に逃げられました。おそらくそちらに向かってます。対処してください」

「悪魔がこちらにやってくるってぇ……。いったい誰なんだい?」

「トゥキディデスです」


 ゾーイはボクシングの観戦のとき、自分が警護したときのことを思い出した。ヘロドトスと比肩するまでもなく、本当の歴史家であると称賛したときの嬉しそうな姿が目に浮かぶ。

 だが、あれが悪魔憑き、だったとは……。

 ゾーイはすこしショックを受けている自分に気づいたが、それを押し殺してスピロにむかって尋ねた。

「じゃあ、お姉さまたちも、こっちへもどってきて合流してもらえるのかい」

「いえ。そうはいきません。もうひとりの悪魔をいぶり出してからです」

「もうひとり……」

「ゾーイ。そちらは任せます。頼みましたよ」

 ゾーイがスピロに聞きただす間もなく、スピロは声をかけてきたとき同様に、一方的に連絡をとざした。


「おい、ゾーイ。なにがあった?」

 マリアがおおきな思考でゾーイに問いかけてきた。突然、思念がとぎれたことで、なにかがあったことを察したらしい。マリアの嗅覚にはほとほと恐れ入る——。

「お姉さまから言伝があったのさ。今から、そっちに悪魔の正体を現したトゥキディデスがいくから、ふたりで相手してくれってさ」

「なんだ、ひとりだけか。じゃあ、ゾーイ、おまえは手を出すな。オレひとりで充分だ」

「しかし、ふたりで……」


「今ので失恋した(ブロークン・ハート)ことを思い出して、むしゃくしゃしてんだ。ゆずれ!」

「じゃあ、なにかい。ストレス解消にやつらを壊す(ブレーク・ダウン)ってわけかい」


壊す(ブレーク・ダウン)?。いいや、どっちかというと撃滅(デストロイ)だな」

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