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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ4 古代オリンピックの巻 〜 ソクラテス・プラトン 編 〜
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第157話 人間だと思って甘くみるからあなたは低級なのです

 スピロはトゥキディデス心から感服しているようにみえた。エヴァはその態度に腹がたったので、わざと口汚く(ののし)った。

「は、わたしたちに感づかれない程度の小物のわりには、ずいぶんと小賢しいですわね」

 とたんに悪魔の瞳孔がぎゅっと縮んだ。顔をゆがめると、その口には無数の鋭い牙が生えていた。目の前で見るには、すこしばかり耐えがたい姿——。

「なにを……」 

 トゥキディデスの悪魔が牙を剥き出しにして、エヴァに襲いかかろうとした。エヴァはまったく面倒だと思いながら、腰から拳銃を引き抜いて、至近距離から額を撃ち抜いた。

 パーンと乾いた音がして、トゥキディデスの悪魔がうしろに跳ね飛んだ。

「まったく……、人間だと思って甘くみるから。だからあなたは低級なのです」


 床に倒れ込んだトゥキディデスの悪魔が起き上がろうとしていた。

「エヴァ様。小物でも悪魔は悪魔、バラバラにするか、頭を斬り落さ……」

 スピロが大声で叫んだが、それを言い終わる前にエヴァは床に倒れたトゥキディデスの悪魔の額に拳銃をむけて、残りの銃弾を撃ち込んでいた。銃弾が撃ち込まれるごとに、ゴツンゴツンと床に後頭部を叩きつけたられたが、それでも悪魔はまだ動いていた。

「あらあら、やっぱりこの銃では力不足ってことみたいです」

 

 エヴァは一瞬、床に転がった機銃のほうに目をやったが、ため息をついてから床にむけて手のひらを大きく突き出した。床に黒い霧が出現して台風のように渦巻きはじめた。その黒い台風の目の真ん中から、銃床(じゅうしょう)がせり上がってくる。

 やがて床からロケット・ランチャーが姿を現した。

 エヴァは銃把(じゅうは)をつかんで、ランチャーをひっぱりあげようとして手をとめた。その様子を残りの四人の賢人たちが、唖然とした目で見ていた。エヴァはその興味が自分の行動にむけられているのか、引き摺りあげたランチャーに向けられているのかがわからなかったので、とりあえずにっこり笑った。

「大丈夫です。これなら、跡形もなく吹き飛びますから」


 その瞬間、トゥキディデスの悪魔が跳ね起き、ものすごい勢いで走り出し窓から飛び出した。

 しまった——。

 エヴァはあわててあとを追おうと窓のほうへ向かいかけた。が、それをスピロの強い声が押しとどめた。

「エヴァ様!。無用です!」

 窓枠に手をかけたが、エヴァはそのことばに思わずふりむいた。

「スピロさん、どういうことです?」

「あの悪魔は競馬場(ヒッポドローム)に向かったはずです」

「えぇ。今、セイさんが戦車競争をしています。そこを襲われたら……」

「大丈夫です。ゾーイとマリア様がいます。ふたりがなんとかしてくれるはずです」

「しかし……」


「エヴァ様、残念ですが……、悪魔はあの一体だけではありません」

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