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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ4 古代オリンピックの巻 〜 ソクラテス・プラトン 編 〜
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第151話 セイ、最後尾をとらえる

 セイの戦車がついに最後尾をとらえた。さきほどから全体のペースがじりじりと落ちてきたせいで、戦車の操縦がおぼつかないセイでも食いついていけている。

 おそらくルキアノスのおかげなのだろう。巧みな手綱さばきでほかの戦車を牽制して、レース自体のペースをダウンさせているにちがいなかった。

 セイはすぐ目の前に最後尾の二台の戦車に迫った。横にならんでセイの前をふさいでいる。

『これを抜くのはやっかいだぞ!』

 セイは心の中でそう自戒し、どこかつけいる隙がないかを探ろうとした。だが、セイの戦車の馬たちが、戦車に触れそうなばかりに近づくと、ふいに正面の二台の戦車が両側に間隔をとり、セイのために道をあけはじめた。

 まるでセイに道を譲ろうとしているかのように、その隙間は馬車一台分きっちりの間隔がある。セイは目の前にひらけた空間に目をやった。おどろいたことに道をゆずってくれたのはすぐ手前の二台だけではなかった。その奥の二台も手前の戦車と連動するように道をあけてくれていた。

 セイにはこれは両側から狭みうちするための、あからかさまな罠としか思えなかった。

 どうする——?。

 セイは迷った。このままスピードをあげても、この間隔を無事に抜けられるとは到底思えない。だからと言ってこのままの状態をずっと続けていることもできない。

 その時、右側の戦車に乗る、かなり筋肉質の体をした卸者がふりむいて、大声でセイに言ってきた。

「セイ様、わたしたちはあなたの味方でさぁ。この間を通り抜けて前にでてくだせぇ」

「味方?」

 セイが間の抜けた返事をすると、今度は左側の御者が声をあげた。こちらはかなり年を喰ってみえる。かなりのベテランなのかもしれない。

「ルキアノス様から、アルキビアデス様のご命令であなた様を勝たせよ、と指示を受けております」

「アルキビアデス……。きみたちは?」

「はい、アルキビアデス様の御者です」

「でも、こんなことをしちゃあ、君たちが勝てないんじゃないか」

 セイが前にむかって精いっぱい声をあげると、筋肉質の御者が悟ったような顔をむけてきた。

「しかたがありませんや。アルキビアデス様のご命令ですからね。それよか、セイ様を勝たせられなかった時のほうが、あとでお叱りを受けてしまいまさあ」


「さあ、セイ様、早く。早くしませんと折り返し点がきてしまいます」


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