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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ4 古代オリンピックの巻 〜 ソクラテス・プラトン 編 〜
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第142話 さて、五賢人のみなさま……

 五賢人への聴取を終えて、スピロはこのなかにいる悪魔が誰なのかをつかんだ、と感じた。

 さぁ。これからその人物を追い詰めねばならない。


「さて、みなさまのお話を順番にお聞きしましたが、わたくしは大変おかしなことに気づきました。ここにおられる五人は皆様がご存知のはずなのに、だれひとりそれに言及しない重要なことがあると……」

 スピロは全員の表情をつぶさに観察しながら言った。

「ご存知ですよね。今、この時点、この年のオリンピックが開かれている時——。


 アルキビアデスは、もうこの世にいないことを……」


「そんな嘘でしょ」

 その投げかけに一番最初に反応したのは、五賢人のうちの誰でもなく、エヴァ・ガードナーだった。スピロは前もって教えておくべきだったと思ったが、アルキビアデスに心酔しているエヴァに前もって教えておくという選択肢はなかった。

「えぇ。エヴァ様。間違いなくアルキビアデスは死んでいるのです。それも四年も前のこと。前回のオリンピックの年にね」

「じゃあ、なぜ……」

 エヴァが声をうしなった。それの意味することがふいにわかったということだろう。

「えぇ。そうなのです。なぜかここにいる五人の方々は、そのことに誰一人として言及する者はいませんでした。誰もがアルキビアデスにゆかりのある方ばかりなのにですよ。なぜでしょう?」

 スピロが五人の賢人たちを睥睨(へいげい)するようにして言った。だれもがその矛盾点を指摘されて黙り込んでいた。

「まず、わたしはここにいる皆さん全員が悪魔なのではないかと考えました。ですが、五人もの悪魔がひとつところに集うているとしたら、それは得も言われぬ『(よど)み』が感じられるものです。さすがに我々も気づかないはずはありません」 

 スピロはエヴァを見つめていった。

「ここにいるエヴァ様のようなすぐれた能力者がいるのならなおさらです」

 スピロはもう一度賢人たちのほうを見た。

「次に考えたのは、何者かがいつの間にかあなた方の記憶を改変して、アルキビアデスが生きていると思わせた、ということです。

 でも、なぜそんなことをする必要があったのか……。

 タルディス様の未練を果たさせないつもりなら、そんなことをする必要などありません。元々の未練は『オリンピックで優勝できなかった』という単純なものです。アルキビアデスを蘇らせ、そして彼がまだ存命であると記憶を改竄するほど大仕掛けを労するほどのものではないでしょう」


「でも、そうまでして達成させたい目的がある。もしそうだとしたら、アルキビアデスが四年も前に死んでいるということを、本来ここにいてはならない存在である、ということを知っていて、黙っていた者こそが『悪魔』だということなのです」

 

スピロはゆっくりとアリストパネスのうしろにまわった。



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